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この頃、このサイトをご覧になって下さる方々の中に、学生の方や、同業者(音響)でない一般の、ミュージカルやお芝居が好きな方が多くいらっしゃるということを知り、それではそういう方々のために、日頃私の現場では、どんなふうに音響をやっているのか、普段ご覧になっているミュージカル公演の裏側では、音響はどんなことをしているのか、その一部を御紹介しようと思い立ちました。
ですから、別段真新しいことが出ている訳でもありませんので、御同業の方々には拍子抜けされる内容だと思います。

私の現場では、以前に月刊放送技術の連載エッセイ「音話屋ダイアリー」の98年12月号99年1月号でお話した、スリーマン・オペレーションが基本ですが、それがどんな状態かというのが、この写真です。


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左から、効果音卓にサウンドトラックス、ワイヤレス及び各所拾いマイク卓にヤマハ、生演奏のバンド卓兼トータルメイン卓としてアレン&ヒースです。
スリーマン・オペレーションについては、「音話屋ダイアリー」の98年12月号と99年1月号を御参照いただきながら、この先をお読み下さい。
いずれも、
二人で運べる程度の小振りな卓を使っています。でないとブースの場所が広がりすぎちゃって顰蹙を買ってしまいますし、仕込みもバラシも大変です。また、リハの最中に卓が火を吹いた経験のある私としては、(原因はリトライトに電源を供給する部分のトラブル)効果・ワイヤレス・音楽それぞれのパートが、別々の卓を使っている方が、もしどれか一台イッちゃっても、公演が続行できることの方が大事です。


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それでも、効果で24ch、ワイヤレス/拾いで24ch、音楽兼メイン卓が36ch、しめて84chです。
それぞれの卓が、いつでもトータルメイン卓に切り替われるように空きチャンネルを持つようにしています。我々の仕事の合言葉は「
Show Must Go On」ですから。
それでも、いざリハが始まると、何だかんだでチャンネルがどんどん埋まっていってしまって、気がつくとチャンネルがパンパンなんですけどね。
卓に座った位置から舞台を見たときの写真がこれです。


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先の写真では、舞台から卓までが随分離れてるのがお分かりいただけますが、この写真を見ると、いざ卓に座ってみると、意外によく見えるのが分かるでしょ?
この位置を
主催者と交渉して確保するのが、チーフの大きな仕事だと思います。オペの上手い下手は、サブチーフ以下の兵隊の問題です。私が頼まれて兵隊になるときはオペに専念します。私がチーフの時は、みんなが気持ち良く仕事が出来るようにという環境作りだけに専念します。チーフと名乗っているのに腕前や知識やキャリアだけに頼りそれをひけらかし、身内に威張り主催者や舞台や照明や出演者に対しては何も言えない、そういうチーフがこの頃多すぎますが、それじゃいつまでたっても音響のステイタスもギャラも上がらないぜ。

あと、この写真で御注意頂きたいのが、このオペ中の手元の暗さ


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私はよく、いろんなメーカーさんの新製品開発のアドバイザーを頼まれますが、上がってきたモックアップを前によく申し上げるのが、つまみや表示について「設計や製作している工場の中は明るいだろうから、これでいいと思うだろうが、これを使用するブースの本番は暗いんだ、これではダメだ」ということなんですが、ハイ、こんなに暗いんです。


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ワイヤレスマイクは大体いつも16本くらい平均で使います。舞台裏にワイヤレスの基地を作って、ワイヤレスチーフとスタッフ2〜3人が専属張り付きで仕事をこなします。


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ハッキリ言って、このワイヤレスチームが、公演の成否を決めますし、卓のオペレータよりも忙しくて大変です。出演者から見れば音響チーフよりも接する時間が長い、文字通り「音響の顔」になるからです。
ワイヤレスチーフに求められるものは何でしょう?
人柄です。これが何より大事です。
朗らかで、明るくニコニコしていて思いやりのある、忙しい修羅場になっても目が吊り上がらない、まぁるい性格の女性。私はワイヤレスチーフにそういう女性を選びます。

ワイヤレスチームは衣装さんや床山さんと上手にやっていけなければなりません。緊張でピリピリしている出演者を上手にあしらい、気持ち良くさせて「あの音響さんいいなぁ」と思わせなければいけません。ワイヤレスを付けに来た出演者のところへ演出家がやってきて、ダメ出しを始めて、その場の空気が刃物のようになったりもします。そういう時に演出家にも好かれる性格でなければなりません。「さっきの昼の部、ちょっと返しの音が大きかったわよ」なんて通りすがりのバンドのメンバーから注文が来たりもします。ワイヤレスの装着に時間がかかるとき、出演者相手に気持ちを和ませる話題、雑学のストックが頭にいっぱい詰まっていなくてはなりません。時には出演者から、世間の話題や流行りのファッション、お菓子、レストラン、音楽などの話を振ってくることもあります。その時に「さぁ、私わかりません」では気まずくなってしまいます。

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衣装や役柄によっては、また着替えによって、女優さんが全裸同然になったりしますので、男のワイヤレススタッフは敬遠されてしまいます。
どうも
音響の内輪では、技術の話ばかりが先行するきらいがありますが、何よりもまず「人間が、人間と、人間を感動させるものを創る」のが舞台、それゆえの総合芸術です。マイクの装着方法のテクニックやマイクの知識なんて、必要に迫られて誰だって覚えてしまいます。それよりも私の望むのは、「出演者にデートに誘われてしまうようなワイヤレススタッフ」これですな。

まぁでも、技術的なことのさわりだけでも、ちょっと触れておきましょうか。
マイクの装着方法に
セオリーなんてありません。衣装プランが出来た時点で衣装さんから絵コンテをもらい、送信機をどこに仕込むか、ヘッドをどの位置に着けるか相談していきます。また振り付けの先生と、寝ッ転がったり抱きかかえられたりする振り付けがあるかどうか相談します。それによって送信機を付けられない身体の箇所が決まってきます。ですからダンスの稽古にも顔を出さなければなりません。それは同時に、「私がこの公演の音響のワイヤレス担当ですから、皆さん千秋楽までよろしくね」という顔見せでもあるのですが。

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ヘッドはこめかみの位置に装着したりもしますが、写真の女優さんの場合、頭に飾り物があって、それがこめかみ辺りで揺れるので、マイクヘッドにぶつかるのを嫌って、この位置になっています。
このように、
すべてケースバイケース、フレキシブルに対応しています。
ケーブルには医療用の肌色テープを巻きます。これは薬局で安く手に入ります。
写真のようにヘッドを口元まで長く持っていくときには、マイクがブランブランしないように、ケーブルにバインド線を添えて医療用テープで一緒に巻いてしまいます。そうすると、マイクの振りが自由になります。

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拾いマイクは、舞台前に5枚と、今回の舞台はバルコニーが出来ていますからそのバルコニー上に床置きのバウンダリーマイクを仕込みます。写真はバルコニーの仕込みマイクですが、すぐそばにある照明のケーブルとはしっかりパーテーションしておかないと、ノイズが乗る原因になってしまいます。


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あとは、写真にはありませんが、バトンからガンマイクを下向きに4本吊り下げています。
もうこの拾いマイクだけでバウンダリー7枚と合わせて11ch、ワイヤレス16本と合わせて27ch、24chのワイヤレス/拾いマイク卓のインプットをオーバーしてしまいます。今回は2〜3chのオーバーなので、音楽卓の空きチャンネルに回しましたが、これでワイヤレスや拾いマイクがもう少し増えたら、ワイヤレス/拾いマイク卓を36ch〜48chのものにしなければならず、そうするとまたブースが大きくなってしまって、主催者が渋い顔をするんだよなぁ。

デジタル卓を使ってコンパクトにまとめる、というのも考えてはいるんですが、ヤマハのO2Rを使う人が増えているけれど、あれは省スペースには絶大なんですが、いかんせん明るいスタジオの中でなら使えるでしょうが暗い本番ブースでは使いにくいことこの上ない。O2Rを使っている人は手元明りを煌々と照らしていますが、「お前それ客の迷惑考えてないだろう」とツッコミたくなるような明るさです。
やっぱりローランドのVMかしらん。以前このサイトでも使用レポートを御紹介しましたけど。


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バンドエリアのマイクは、普通のコンサートと変わりません。ピアノ、エレクトーン、フルート、クラリネット、サックス、バイオリン、チェロ、アコギ、エレキ、コントラバス、マリンバ、ティンパ、ドラムセット、各種パーカッション。舞台装置と共にバンドエリアが決まりますが、今回はバルコニーの向こう側に、横一列で並んでます。写真でお分かりになると思いますが、バルコニーの下に黒い紗のカーテンがあって、その向こう側にバンドエリアが透けて見えてます。


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陰コーラスマイクが2本立っています。ピアノの向こう側にマットが置いてあるのは、劇中、バルコニーの上で揉み合いになった登場人物が一人、バルコニーの向こうへ落ちるというシーンがあって、上からここに役者が落ちてくるわけです。本番中は暗いし、怖〜い!役者だって怖いけど、落ちてくるのを見ているバンドだって怖〜い!狙いが外れて楽器の上に落ちてきたらど〜しよ〜!
まぁ、こういうのも、コンサートとは違う、演劇ならではですな。


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え〜、ざっと大まかにミュージカルの音響を御紹介してきましたが(大まかすぎるか)エフェクターやスピーカに関しては、あまりミュージカルならではという話が少ないので割愛しましたが、それでもこのボリュームだもんなぁ。
別にこのレポートは「こうあるべきだ」などというものではなくて、単に「
Lunadfuegoはこう考えてこう動いています」という御紹介でしかありませんので、押し付けるつもりは毛頭ございません


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また、裏方や音響に興味の無い、あるいは知らない方でも、これを読んで、ミュージカルを見に行ってみようかな、または見に行かれた際に「あぁ、今歌ってるあのマイクは、ああしてるのかなぁ」とか考えて、ちょっとだけ面白く楽しく興味深くなってもらえればとても嬉しいです。
では、劇場でお会いしましょう。チャオ!オーヴォアー!ダスビダーニャ。



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