本番再生ソフトの決定版・
オンラインソフトウェアDJ1800と対応コントローラ&OUTデバイス


DJ1800オンラインソフトウエアを私の周辺のご同業のお友達にご紹介を始めてから、はや2年が過ぎようとしています。
舞台公演での再生メディアをどうしよう、という現場の声は、もはや不安を通り越して危機感にまで達しています。
しかしながら今回のレポートは、私と、エスイーシステムの山本能久さんにとっては、別に今始まった再生環境の問題解決ではなく、実に16年前、1991年から、今日これあるを予想して試行錯誤してきた、その結果なのです。

 というのは、1991年に日本音響家協会の会報の特集「6mmテープに代わるもの」にて、山本さんがサンプラーを、私がAKAIのDD1000について執筆して以来、お互いに、「なんとかMacで本番の音出しが出来ないものか」「Mac1台で自分の仕事の全てが出来るようになりたい」という思いで意気投合し、以来、それぞれの現場で試行錯誤しては情報を交換する、という16年間を積み重ねてきたのです。

 つまりこのレポートは、単なる新しいソフトの紹介ではなく、最近話題になっている、続々と生産中止になっていく業務用CDやMDに代わるものの紹介でもなく、16年前の、6mmテープに代わるものの一つの到達点、という思いで執筆させていただきます。
 最後までお読みいただければ、随所で、そのことを御納得いただけるかと思います。







・1 〜ふもとから5合目まで〜

16年前の、6mmに代わるリアルタイム再生デバイスに求められる条件として、

・オープンテープに匹敵する音質
・簡単な編集機能
・リーダーテープに書き込んだような、日本語で長いタイトルが表記できる
・本番再生に使える音の立ち上がりの早さ
・ネクストストップ機能

ざっとこの5つだったように記憶しています。

 そして、いろんなメディアが登場しました。
 CD-R、MD、独自企画のディスクやテープ、ハードディスク等々。

 私自身、渡り歩いて来た再生機器は、Macを中心に据えながらも、CD-R、MD、AKAIのDD1000、360システム、2002年〜2004年ごろはVJ用のリアルタイム映像送出機を使用して来ました。それは当時のパソコンが、編集機としてマルチトラックとしてエフェクターとして既に十分過ぎるソフトウエアが揃っていながら、本番再生オペに耐えられるソフトウエアが無かったからです。
それぞれのメディアについて、人それぞれ、許容範囲と求めるもののベクトルの向きは違います。
例えばMDについて、この音質で十分という人と、MDの音質に耐えられないという人がいましたが、それはそれぞれ、扱っている仕事のジャンルによっても違うでしょう。
メディアの信用度についても同じです。同業者が顔を合わすと、本番オペ時の再生メディアのトラブル話に花が咲きます。ここでも、MDには何度も泣かされた信用できない、と言う人と、いやMDはそんなことない、むしろCD-Rの方が怖い、という人、さまざまです。
またコンサートなど音楽もののジャンルで90年代半ばより多用されたDAWも、タイムコードで管理をする事を主眼に置いているものでは、演劇やミュージカル、オペラなどの公演では殆どその威力を発揮することはできませんでした。舞台の世界の時間軸は役者の心拍数、イキとマ(間)でオペをする公演ではDAWはただ重厚長大でその割に大した役には立たないものにしかなれなかったのです。
しかしその中で、舞台の世界で、パソコンでそのまま本番音出しをしようという人は当時はとても少なく、ましてやMacで本番の音出しをすることにこだわっている事を話すと、大概、奇異な目で見られてきました。
パソコンのOSの安定度やハードディスクに対する信頼度が低いという理由で、皆さん敬遠されてきたとのことですが、私の現場に限って言えば、1995年のパワーブック520C以降、歴代のパワーブックを本番オペで使用してきましたが、ただの一度もトラブルを起こしたことはなく、むしろMDやCD-Rのトラブルは数知れず、私にとってパワーブックは、どのメディアよりも信頼できる本番オペ用のデバイスであり続けてきたのです。
しかし山本さんや私のような、Macでの本番再生にこだわり続ける人は数年前まで本当に少なく、同業者の中では最もマイノリティーであったことは事実ですし、またマイノリティーであることを強烈に自負しつつこだわり続けてきたことも確かです。


コンシューマーの流れは、お手軽なMDから、パソコンの普及と進歩に伴いCD-R、そして時代は回転メディアから非回転メディアへ移行しています。
プロ音響の本番再生オペ用メディアは、結局どれも、6mmに代わるものとしては決定打を欠いたまま、MDやCD-Rが舞台から退場していくのを見送る、という時を迎えたのです。





・2 〜5合目から8合目まで〜

ここ1〜2年ほど、私の周辺でも急速にパソコンで本番再生オペを行う方々が急増してきました。
それも、ノートタイプのパソコンを使用する方々が多くなっています。
ノートタイプのパソコンの性能の向上により、今や映像編集までお手軽に出来るだけのCPUパワーとメモリ・ハードディスクの巨大化は、音響の仕事としては十分すぎるほどの水準をデフォルトの状態で安価に購入できるようになった、というハードウエア側の事情があります。

 稽古場へノートパソコン1台だけ持って行き、稽古の進行や演出家とのディスカッションに合わせて稽古場で編集作業が出来てしまい、ガヤ録りやナレーション録り、アナウンス録りも出来てしまう。仕込み図も描けるし見積書も書ける。1991年から私がこだわり続けてきた仕事のスタイルが、だんだんマイノリティーではなくなっていく様子をみるのはとても嬉しいことでした。
ソフトウエア側の事情としては、ウインドウズ用のフリーウエアに、パソコンをサンプラーにしてしまう、というソフトウエアの登場があるようです。ハードディスク内のサウンドファイルを任意のキーに貼り付け、キーボードを叩くことで自分のパソコンがサンプラーになる、しかもファイルを貼り付けるのだから1つのファイル当たりの容量、つまり録音時間は関係ない、短い効果音でも長尺の音楽でもいける、という点で、従来のサンプラー専門機を凌駕しています。実際、このソフトウエアを使用している同業者の方々を多く見かけます。

 しかしながら、1台のノートパソコンがサンプラーに変身するというのは、それはそれで大変魅力のあるものですが、それは結局、再生機器1台分に置き換えられただけにすぎず、ノートパソコンの上に機材を積み重ねることはできませんし、複数の再生機器を立て続けに叩かなければならないプランの場合、結局のところ、ノートパソコン1台にCDプレーヤにMD、という混成部隊となります。これはあまり、ノートパソコンを再生機器に仕立てようというには、お利口な結果ではないな、と、私自身もそのような混成部隊で仕事をしながら思い続けてきていました。
そこへ山本さんから2005年に、今回のオンラインシェアウエアのDJ-1800を御紹介頂いたのです。


 このソフトを初めて目にした時の衝撃は大きいものでした。
 ただ単純に4台のCDプレーヤがディスプレイに現れています。

そうだよ、これでいいんだよ、複雑な操作も高度な機能もなくていい、これだけでいいんだとずっと言い続けていた、正に待ち焦がれていたものがそこにありました。

 OS9.X用のバージョンに関してはこれ以上のバージョンアップはありませんということでたったの10ドル。
OS10.X以上に関しては60ドルで今後もバージョンアップが行われるとのことです。
両方購入して使用してみました。
OS10.1以上対応となっていますが、安定動作は10.3以上の方が確実のようです。
言わずもがなの蛇足ですが、省エネルギー設定、スリープ機能、スクリーンセイバーは切って使用しています。トラックパッドのタップ機能は生きていても大丈夫でした。
使用感は全く満足の行くものでした。操作はCDプレーヤと全く同じですから迷いようがありません。
OS10.X用のバージョン2.0からは日本語ローカライズされ、音ネタのタイトルが日本語で入れられるようになりました。しかもMacでファイルに付けられるタイトルの長さが丸々表記できるので、長いタイトルでも問題ありません。この事が私に与えてくれた解放感は、使ってみるまで分かりませんでした。6mmの時代、リーダーテープに、音ネタの名前の前に決まって台本或いはスコアのページ番号を書くのがクセだった私は、MDやCD-Rになってから、タイトルが日本語表記できない長いタイトルが書けないということに、自分でも気付かぬ潜在意識下でこんなにもストレスを感じていたのか、と今回改めて大いに自分で自分に驚きました。
対応してくれるファイル形式はSD2、AIFF、WAVE、MP3。十分です。バージョン2.0からはiTuneにも対応しています。今回の公演では、SD2とAIFFをわざと混在させて使用しましたが何の問題もありませんでした。
音質はこのファイル形式ですから不足はありません。オートゲイン機能は好みが分かれるところでしょうからお嫌いな方は機能をOFFにしてお使いになればいいと思います。私は今回の公演には大変便利だったので重宝いたしました。
アプリケーションとしてとてもシンプルで軽いものなので、操作が重たいということは全くありません。その結果としての音の立ち上がりの良さはサンプラー以上です。ファイル側で音あたまをタイトに編集しておけばそれがそのまま反映されます。
ソフトウエアとしては申し分ないのですが、実はここまでが、登山でいうと8合目まででしかないのです。
頂上まで到達するには、何が欠けているのか、何が足りないのかをお話しいたしましょう。






・3 〜8合目から頂上へ〜

DJ1800がどんなに良いソフトであっても、それで完璧になれない最大の理由は、再生機器としてのパソコンのハードウェアの限界です。
まず、DJ1800が4台分のCDプレーヤと同等のソフトとは言っても、パソコンでポインターでボタンを指してクリックしていたのでは4台同時に叩くことは出来ません。また、4台分のステレオのアウト、合計8アウトなければ意味がありません。
ボタン機能をキーボードに割り振ったとしても、キーボードやトラックパッドの、再生機器のボタンとしての使いやすさや耐久性は懸念材料となります。暗闇の本番中の手元明りの下でのキーボードやトラックパッドの操作は、再生機器の操作ボタンとは比べ物にならないほど使いづらく、またキーボードのストロークも、元々再生機器として作られているものではありませんから、使いやすさや耐久性を望むほうが無理というものです。

 抜本的な解決策としては、再生オペレート専用のコントローラを作ってしまう、ということは、誰でも考えます。でも、「あったらいいなぁ、どこか作ってくれないかなぁ、サードパーティー会社に要望出してみようかなぁ」で大体話は終わってしまう、これが今まででした。
それらの問題を解決するために、エスイーシステムの山本能久さんは、自作でUSB接続のコントローラと、8アウトデバイスを制作してしまいました。
これによってMacは、完全に4台のCDプレーヤと同じになったのです。
エスイーシステム製のコントローラとアウトデバイスを得てようやく、頂上に到達したと言えるでしょう。
山本さんは、コントローラについて、「プログラムが書けるほどパソコンに詳しくないから」と謙遜なさりながら、ドライバソフトなしでUSB接続出来るよう、コントローラ側にマイクロチップを搭載してDJ1800と完全リンクするようにしてしまいました。これの方がずっとスゴイと私は思ってしまうのです。
今までいろんなドライバソフトなるものによってパソコンの動作不良に泣かされてきた身としては、全く安心して使用できます。
コントローラのプレイボタンを4つ同時に「せーの」で押してもちゃんと4台のCDプレーヤが同時にスタートします。
このシステムを初めて現場に導入したのが2005年の初夏、オペラ公演「カルメン」の効果音出しに使用してきました。
オペラと言っても私が長年お付き合いしている指揮者は、電気音響に理解と造詣が深い分要求が多くシビアで、並のストレートプレイよりもはるかに大量の効果音を使ってオペラを作る方です。
この時の「カルメン」でも山ほどの効果音を使用し、それを稽古場から本番まで、このシステムだけで全く何の不安もトラブルもなく、成功裏に終えてきました。
4台のCDプレーヤと同等とは言いながら、1台あたりのCDに割り振るサウンドファイルの容量に制限がある訳ではないので、CDのように録音時間を気にする必要がなく、音ネタの順番も音ネタの差し替えも簡単に入れ換えることができます。また日本語で長いタイトルが付けられるという点からも、4台のCDプレイヤーを凌駕する性能です。 勿論リモコンで4台同時に再生が可能で8アウトのデバイスを使用していますので、演劇やミュージカル、オペラ等の公演は、効果用に沢山のスピーカを仕込み、一度に複数の効果音をいろんなスピーカから出しますから、サンプラーと比較してみても、サンプラーよりもこのシステムの方が上ということになります。
MDと比べても音質は比較になりませんし、このシステムによって、初めて私は、ポスト6mmの再生機器と言われた全てのメディアを凌駕し、併せて6mmをもようやく完全に凌駕することができて、16年来の問題に終止符を打つことが出来た、と、稽古場で本番の劇場で、使えば使うほどに確信を深めていったのです。






 2007年初夏の時点で、私はインテル搭載のMacBookに、このDJ1800と、SPARK、LogicProを入れて持ち歩きます。このシステムでの本番をこなしたミュージカルやオペラの公演は15本を超え、もうなくてはならない存在になっています。

 OSも10.4.3ですが全くノートラブルです。DJ1800はヴァージョンが3.4βになって、ネクストストップ機能が追加になりました。これは山本さんが私たち日本の現場の声を本国のプログラマーに伝えてくれて実現した追加機能です。山本さんに心から感謝いたします。

 SPARKは音声をデータ変換する時のアルゴリズム解析からあらゆるサウンドソフトの中で最も音質が良いと評価の高い2chソフトです。レコーディングや、マルチを組む必要がない編集はこれで全部OKです。またSPARKのプラグインエフェクトは、ハードウエアでも音質の良さが評判になっているTCエレクトロニクスのエフェクトがそのまま入っています。マルチを組んでの編集にはLogicProを使用します。
つまり、4台のCDプレーヤと高音質2chレコーダとマルチトラックレコーダとマルチエフェクタを、まとめて小脇に抱えて歩いている訳です。
やっとこういう時代になってくれました。やっとこの時代がきてくれました。

 山本能久さんのエスイーシステムでは、DJ1800オンラインソフトウェアの開発者の方と、対応USBリモートコントローラと8アウトデバイスの製造販売契約を結びました。エスイーシステムにお願いすると受注生産して下さいます。

 受注に際して、これはいかにも現場が本職の山本さんらしいお話ですが、コントローラに取り付けるボタンは、各々使いやすいもの、フィーリングが合うものを自分で買って持ち込んで欲しいとのことです。

 私も専用のコントローラをお願い致しました。MacBookとiBookの2台をそれぞれメインとバックアップとして、同時に1台のコントローラでオペ出来るよう、コントローラから2本のUSBケーブルが出ている仕様です。
これにより、メインとバックアップの同時叩き出しの環境が整いました。

 これを普通のCDプレーヤに置き換えると、4台のCDに4台のバックアップCD、合計8台のCDが積み上げられ、それにコントローラが4台ならんでいるという凄まじい環境になってしまいます。

 それを考えただけでも、このシステムがいかに夢のようなシステムか、お判りいただけると思います。

 8台のCDと4台のコントローラに対して、2台のノートMacと1台のコントローラ。

 価格を考えても、シェアウェア代80ドルに、コントローラとOUTデバイスで10数万円。

  これをもって私の再生環境問題は区切りをつけることとなりました。

 今後考えることがあるとすれば、卓がハードディスクを内蔵していて、音素材をみんな入れておいて、シーン毎にその音ファイルがどのフェーダーに貼付けられてどこへ出て行く、というところまで管理出来る、いわゆる「再生機器レス環境」となるでしょう。


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