ヴァーチャルサウンド・音の絵本「赤鼻のトナカイ」制作実況!

月刊放送技術(兼六館出版発刊)の連載エッセイ「音話屋ダイアリー」で、ここ何ヶ月か連続でお送りしている、国際福祉機器展に出品するヴァーチャルサウンド・音の絵本「赤鼻のトナカイ」が、8月22日、無事完成いたしました。
制作に至るまでの経緯は、音話屋ダイアリーをお読みいただくとして、ここではスタジオ内の様子をお話しましょう。
この作品は登場人物すべてを、宮城好子さんという声優さんが一人芝居で演じ分けてもらっています。


宮城好子さん

それをローランドのRSSヴァーチャルサウンドシステムで、聴き手を取り囲むようにあちこちから声が聞こえるようにすることで、一人芝居の面白さを、より鮮やかに、より立体的に楽しんでいただけるように仕上げてみました。
また、吹雪の夜空を、赤鼻を先頭にしたサンタクロースのソリが飛ぶシーンでは、空をソリが飛んでいるような音像移動を作るのに、大変苦心しました。
ただ、プレゼントを貰った子供達の「ありがとう、赤鼻さん」という台詞だけは、宮城さん本人にやってもらってしまうと、お礼を言っている子供と言われている赤鼻が一緒になってしまい、テーマがボケてしまうので、その他大勢のガヤ録りをしました。
が、お盆の時期で回りに子供が全然おらず、ならば、と、私の愛息(すいません、私、愚息という言葉が嫌いで、使わないことに決めておりますもので)、石丸壮一満4歳がスタジオデビュー!


そうちゃんデビュー

更に、子供の声を出せそうな人々をかき集め、私の妹、由希子もスタジオデビュー!(しかも臨月)
妹の旦那様で私の義弟、ローラン・ボーニッシュ(フランス人)も赤鼻に扮して応援参戦!


由希子さんデビュー&赤鼻のローハン


みんな赤鼻

 

女王様真面目に収録中

ローランドの川内さんも飯田さんも、Lunadfuegoの白石女王様もみぃんな赤鼻だぁ!
何やっとんじゃ、このスタジオは。
「あんたのスタジオは必ずいっつも、こうやってお祭り騒ぎになっちまうんだから(注:ローランドRSSデモCD制作記を御参照下さい)」と、今回エンジニアを引き受けてくれた、ぢょー中山氏(決して「じょー」ではありません「ぢょー」です)にキツイつっこみを機関銃のようにバシバシと入れられながら、丸2日間のレコーディングが無事終了しました。

スタジオでの私の仕事道具は、ご覧の通り、原稿用紙と鉛筆とストップウォッチ。スタジオでは私は決してフェーダーは握りません。あくまでも脚本家、演出家としての仕事をします。

大変にオールドスタイルな仕事の仕方だとは自分でも思いますが、新しけりゃいいってもんでもないですし、劇場のサウンドデザイナーがスタジオでフェーダー握ってたらスタジオの人間に失礼でしょう。


ただいま製作中

ぢょー中山氏から仕事の合間に、最近の完パケ制作の分業の有り様を教えていただきましたが、少なくとも私に限って言えば、最近のその有り様では、製品は作れても作品は創れそうにもないですし、いつも音話屋ダイアリーで言っている「人間が、人間と、人間を楽しませたり感動させたりするものを創ろうとしているのに、創る側の人間同士が心が通いあわなくてどうする」という理屈(これは舞台の世界の理屈で、スタジオでは、へ理屈になるのかもしれませんが)は、制作の現場に居合わせた人々全員の、その場で閃いたインスピレーションを全部取り込むという制作スタイルなので、いきおい、制作現場はお祭り騒ぎになりますし、また、そうしたいのです。

「俺の仕事はこれだけ。以上終わり」ではなく、役目や立場を超えて「こうしたらもっと良くなるんとちゃう?」と全員が他セクションのことも考えながら進んでいく制作は、舞台の世界の特徴かも知れませんし、効率の悪いやり方でもあるでしょうが、完パケでも有効だと私個人は思っています。

少なくとも、舞台をやっているプロの声優さんたちは同じことを考えています。
じゃあ、私の仕事は?そうです。タイコモチですね。
みんなが面白がって、みんなが盛り上がってくれれば、それでOK。

脚本は、現時点でこれ以上いじる必要がないと確信できる脚本が手元にある。
エンジニアは、私のことを誰よりも知り抜いて下さっているぢょー中山氏がいてくれる。
キャストは、この作品にはこの方しかいないと確信できる宮城さんに来て貰えた。
もうこれで、私の仕事は8割終わったも同然です。スタジオに入る前に、成功することが決まっているようなもんです。

今回の声優、宮城好子さんは、全盲の方です。スタジオ入り一週間前にミーティングをした時、待ち合わせの店で、駅までの道のりで、「何てこの国は不自由に出来ているんだ」と、何べん我が事のように腹が立ったことか。

「目が不自由な人」という言い方は不適当のように感じます。単に目が見えないだけなんです。
それが不自由に感じるのは、この国が、目の見えない人にとって、
不自由に出来ているからなんです。

ミーティングの時に宮城さんに、「何かこちらで用意するものはありますか?」とうかがうと、
「回転しない背付きのイスをお願いします」とのこと。
以前、別のスタジオで、宮城さん本人はまっすぐ座っているつもりでも、目の見えない人はどうしても身体がフラフラ揺れてしまう。それで、「マイクとの距離が変わってしまう」とクレームをつけられたとのこと。
だから、マイクとの距離が決まったら、そこで背中をイスにつけて固定してしまいたい。

それから、「机に、ビロードかフェルトなど、音のしない布をかけて下さい」とのこと。
台本を点字にして、それを指で追うときに、ページが替わると、紙が擦れる音がすると、やはりこれもクレームをつけられたとのこと。

この2点をぢょー中山氏に伝えると、「そんなの当たり前じゃん」と、先刻承知、言わなくてもぢょーは心得ていてくれてちゃんと準備をしてくださっていました。(こういうところが、流石、分かってくれている、と、私が有り難いと思うところです)が、他所でそのようにクレームをつけられたということについては、ぢょーもあきれかえっていて、「そんなの録る側がちょっと考えればいいことじゃん」と言ってくれます。

宮城さんのような人が、目が見えないというだけで活躍の場が少なくなるのは本当に勿体ない、という以前に理不尽だと感じます。どこのスタジオにもみんな、ぢょー中山氏がいればいいのにね。


ぢょー中山氏

収録後、宮城さんに花束を差し上げました。私の妹夫婦、ローラン・ボーニッシュと由希子は、フラワー・アレンジメントの仕事をしているので、目の見えない宮城さんに、(それでもお花が大好きだと伺っていたので)何を差し上げたらいいか相談すると、カサブランカという、大輪の百合の花がいいと教えてくれました。
大きく、手触りが優しく、花の形がハッキリとしていて、しかも大変いい香りがする花です。
宮城さんはとても喜んでくれて、嬉しい、嬉しいとおっしゃって下さりながら、両手で、カサブランカの花を包むように触りながら、ずーっと、撫で続けていらっしゃいました。

よかった。この仕事してほんとによかった。その時そう思いました。

この音の絵本は、9月12、13、14日に東京、有明の東京ビックサイトで開催される「国際福祉機器展」に、ローランド株式会社から出展されます。私も開催期間中はプレゼンターとして会場にいます。
是非おいでください。
そしておそらく、機器展終了後に、この音の絵本をどういう形で一般配布するか、ローランドと私とで相談することになると思います。
決まりましたら、このサイトでも御紹介いたしますので、御希望の方は是非御連絡下さい。

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