SONYスピーカ 〜名車の条件〜

前回のSONYのPAスピーカのレポートでも書いた通り、スピーカのレポートは難しい。
スピーカのレポートは車のレポートに似ていると思う。
数値に表れないテイスト的な部分での好き嫌いが、機種選択に大きなウェイトを占めるということが共通しているからである。そして、スピーカは多くの立場の多くの人々がその音を耳にし、感想を抱くので、「私も言いたい」「俺にも言わせろ」といった渾沌のカオス的状況を呈してしまうからである。
しかも、よい車、よいスピーカというものは、多くの異なるベクトルを持っているから収拾がつかない。
操作性はともかく、ひたすら速い車。これも、いい車だ。燃費と排気がクリーンで、うんと安価な車。これを名車と呼ばない訳にはいかない。圧倒的巨体と存在感、そして応接間が走っているようなゴージャスなリムジン。これも涎がでるような良い車だ。
そして、フェラーリとロールスロイスとトヨタプリウスを同じ物差しで批評することは出来ない。
これはスピーカにも言えることである。

SONYのPAスピーカについては、この春、予告編としてのインプレッションを本サイトに掲載したが、8月下旬、このスピーカをミュージカルの公演にて試用できる機会に恵まれたので、その時のレポートを記してみようと思う。毎度申し上げていることだが、これはあくまでも私のフィールド、私の使い方、私の価値観でのインプレッションなので、皆様のこのスピーカへの判断材料には到底お役には立てないと思いますが、現場実例の一つとして、お読み下さい。

今回の試用は、前日まで加山雄三さんのコンサートで使用されていたものを、SONYさんのアテンドで、クラフトワークさんが搬入してくださり、チューニングにもいろいろと御助力を頂きました。
クラフトワークの櫛田さんにこの場を借りて心から御礼申し上げます。
本当に有り難うございました。
今回は、キャパ約550のホールでのミュージカル公演。音楽は全部生演奏で、ドラム、ウッドベース、エレキギター、ピアノ、キーボード、バイオリンという編成。それらバンドのSRと、ガンマイクやPCC等の、拾いマイク、出演者のワイヤレス、効果音などが、今回のスピーカで鳴らすネタ元である。
セッティングが終わって、まずCDソースで試聴をしてみる。
オーケストラやストリングス、またそれらをバックにしたヴォーカル(特に女性)は素晴らしい。
ロックや男性ヴォーカルは、今回のコンディションに関しては、何だか優等生のロックのような、枠の中にお行儀良く収まったような音になっていた。
効果音は実にリアルに再生される。この、実にリアル、というのが、今までちょっと経験したことのない「リアル」であった。
というのは「ずばぬけてリアル」という意味ではなく、今までにも効果音再生をしていて、「うん、このスピーカだとリアルに感じられるなぁ」という経験は何度もしてきたのだが、そのリアルというのは、その公演の世界にとっての、お芝居の世界の中での音の共演者としての「リアリティを持つ」という意味でのリアルだったのだが、今回のリアルは、「音素材として、スタジオで聞いていた音と寸分たがわぬ」という意味合いでのリアル、である。これはある意味とても恐いことである。効果マンの腕と感性が問われてしまう。
音質から何から、素材がそのまま再現される。「あなたが作って持ってきた効果音はこういう効果音ですよ」と容赦なく提示してくれてしまう。その効果音をオペするときも、音に芝居をさせなければてきめん、「この音響さんはこのように音素材をただポン出ししているだけですよ〜!」とお客様に教えてしまう。
巨木が倒れる音や怪獣の足音などを「迫力を持って再生してくれる」なんてとんでもない。そういう音素材を作りさえすれば「迫力を忠実に再生」はしてくれるのだが。すべてはこちらの責任である。
何もかもあからさまに白日の下に引きずり出す凄みがある。
SONYのスタジオモニターのユニットをそのまま使用している威力が出ているのかも知れない。

能率もとても良く、欲しい音量は十分にくるのだが、パワー感、ドライヴ感といったテイストからは、ちょっとスタンスをはずしたシステムのように感じた。また、ちょっと独特なホーンのせいか、多くのSRスピーカのように、強い指向性を感じさせない。音量を上げていくと、スピーカから音が段々大きく飛んでくる、というのではなく、音量を上げていくと、ホールの空間が段々大きな音で満たされていく、という印象を受ける。
だから、スピーカのすぐそばの客席でも、最後列の客席でも、(今回の会場は最前列と最後列の高さの高低差が激しかったのだが)体感する音量感はさほど変わらない。これって凄いことだよね!?
反面、スピーカ周囲の状況に敏感に反応する。スピーカの背後に布一枚引いただけで、「何もあーた」と突っ込みたくなるくらい、「今私の後ろに布が引かれましたーッ!!」という音に変わる。
これにはSONYの冨宅さん、クラフトワークの櫛田さんもビックリしていらした。

アコースティック色の強い音楽公演やミュージカル、そしてオペラなどにこのスピーカは威力を発揮すると思う。前にも記したことがあるが、ウィーンのシュターツオパーでは昔、JBLの4344を片側8発ずつ、計16発をメインスピーカとして使用していたことがある。SONYのモニタースピーカの音をSRにするこのシステムならば、その役目も果たせるのかもしれない。むしろ設備で好評を得ることができそうだ。

このレポートは99年8月31日に書かれたものであり、予告なく追記・変更されることがあります。
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