Roland LOGO

皆さま、この度は、ローランドのPAクリニックに御参加下さいまして、ほんとうに有り難うございました。

普段は音響ブースにて、人の後頭部ばかり見て仕事している私が、人前に立って視線を受けて、しかも話をするだなんてこと、もう心臓バクバクで大変でした。

毎回、お客さんが入ってきて10分くらいすると、恒例の「イヤイヤ病」が出て、「もう帰る」とか、「逃げるなら今だ」とか、ゴネまくっては、ローランドさんが、なだめたりおだてたりして、押し出されるように舞台に立っていたのです。

一度なんか、司会者が講師紹介をしゃべっている最中に急にトイレに行きたくなり、「俺トイレ」と腰を浮かせたら、逃げるんだと思われて「いけません」「ホントにトイレだよぉ」「観念して下さいっ」と、訳のわからない会話を出番直前までしていたんです。

その反面、客席にお客様がいる、というのは、本当に嬉しいことでした。

人数の多い少ないではないんです。熱を帯びた、食い付いてくるような視線と、客席から立ち上るテンションが、こちらを盛り上げてくれます。「こいつは何をしゃべる気だ?」とか、「なんだこいつは、何者だ?」という気配が、ますますやる気にさせてくれるものですね。

「よ〜しよし、見てろよ、1時間後には目からウロコだぜぃ」と、ファイトが沸いてきます。

終わったあと、本当に沢山の方々が「良かった」「セミナーなのに感動した」「また来て欲しい」と声をかけて下さいました。こちらこそ!本当に嬉しかったです。

また後日、メールにて沢山の御感想をいただきました。頂いたメールは、みんなお返事を出しましたが、届いていますでしょうか?頂いたメールの中には、文字化けしているものもあって、それらは電話やFAXなどで御連絡しておりますが、私の送ったメールが文字化けしていた、という方がいらっしゃいましたら、御連絡下さい。

今回のクリニック、そしてPAサウンドブックを通して、皆さまにお伝えしたいと思っていたことが、皆さまから寄せられた感想などを拝見すると、ちゃんと届いていた、ということが、私を大変幸福な気持ちにさせてくれました。

クリニック、サウンドブックはいずれも、

1 プロがプロにテクニックを伝授するためのものでは決してありません。

2 プロがアマチュアに、プロのテクニックを見せびらかす場でも断じてありません。

プロが、プロのノウハウを元に、アマチュアの現場での事情や心情を汲み取って、アマチュアの現状に即した、アマチュアのためのPAのやり方、を、お話ししてきた積もりです。

アマチュアがプロのまねをするのは、いいことではないばかりではなく、大変危険です。

プロが、「俺達プロはこうやってるんだ」と、プロの現場のノウハウを不用心にアマチュアに教え、アマチュアがそれを鵜呑みにして、現場で試して、トラブルが起きても、プロは責任を取ってくれません。

そのいい例が、「スピーカの許容入力とアンプの出力の関係」です。

プロは平気でスピーカの許容入力より大きな出力のアンプを使います。音質の問題、能率の問題、その他いろんな要素を鑑みて、プロはそうするのです。

それを、「俺達プロはこうやってるんだ」と不用心にアマチュアに話すと、どうなるでしょう。

プロは音を出すことでお金を貰っています。そのお金でごはんを食べ、機材を買い、機材を修理します。お金を貰って生活しているかどうかが、プロかプロでないかの境界線だと思っています。

つまり、機材は始めから、壊れることが前提、盛り込み済みなのです。機材は、買ったら使い倒し、消耗し、修理して、また買い替えるものです。プロにとってはそうです。

ではアマチュアはどうでしょう。音響機器を、スペアも揃えて、きちんと空調の整った倉庫に機材を保管することをアマチュアに強要できるでしょうか?

アマチュアが知り合いに頼まれてPAを引き受ける時は、大概、自分の虎の子の機材や、人に頭を下げて貸してもらった機材をかき集めてやっています。

そういう機材を使っているアマチュアが、プロの話を鵜呑みにして、スピーカの許容入力より大きいアンプをつなぎ、万々が一の事故があって、スピーカがトンだら、どうしたらいいんでしょう?

赤字どころの騒ぎじゃすみません。大切に愛着をもって使っていた機材は壊れるわ、機材を貸してくれた知人とは気まずくなるわ、「PAなんか引き受けなければよかった。音なんて、ロクなもんじゃねぇや」と思ってしまうでしょう。

私が一番危惧するのは、そこなのです。

こういう時の説明は、「プロはスピーカの許容入力より大きい出力のアンプを使うこともあります。

でも皆さんは、そんな必要はありません。安全のために、スピーカの許容入力よりも小さい出力のアンプを選択して、万が一のトラブルに備えましょう。」というのが、正解でしょう。

アマチュアが、アマチュアの出来得る限りのことをするための、本当にアマチュアのためになる、アドバイスをしてあげたい。

それで駄目なときは?その時にこそ、プロがいるのです。

アマチュアの人たちが、「手は尽くしたけど、これ以上は、自分たちの技術や器材では手に負えない」という時にこそ、プロが真価と価値を発揮するのです。

PAサウンドブックを読めば、PAの経験のない人でも、本の順番に沿って仕事を進めることで、PAが一通り、必要最小限のことは出来ますよ、と、言ってきました。

それで出来ない局面が来たら?そこからが、プロの必要なレベルですから、お金をキチンと払ってプロを呼んで下さい。そのためにプロはいるのです。

ところがどうも、この本が好評なのは有り難いのですが、あっちこっちで、プロの養成のための、新人研修のための本として、採用されるケースが多いようなのです。

また、もう一つの誤解として、テクニックを紹介する本、クリニックだと思っている人が、まだ随分多いようです。

じょーだんぢゃありません。もっと誤解されるのを恐れずに、こういう言い方をすれば、私は、クリニックで、90分なら90分かけて、テクニックを否定しているのです。

いや、これじゃ説明になってないな。詳しくは、「ローランドPAクリニック講義内容」をお読み頂ければ分かりますが、私が言いたいのは、

「現在言われているテクニックは、音響の先人の方々が、現場で御苦労なさりながら、試行錯誤の積み重ねで生まれてきたものである。それは大変に有り難く、かけがえのないものである。では、私たちは、その先人から何を継承しなければならないのか?

先人が試行錯誤を重ねている時、何を考えていたのだろうかということをこそ、考えなければならない。音があって、音を出す出演者がいて、それを聴くお客様がいる。それらみんなにとって、現在ただ今この場で、どうしたらみんなが幸せになるのか、限られた時間と機材と物理的条件の中で、どうしたらみんなにとって良い結果が生まれるのか。

それを考えれば、プロもアマも関係なく、その時その場での「正解のテクニック」は、自ずから見えてくる。先人達も、そうやって経験を積み上げてきた結果を、私達に伝えてくれている。

私達はただ単に「マイクはこれがいい」とか「この楽器にはこうやってマイクアレンジするものだ」という、形式だけのテクニックを、丸暗記するように憶えるのではなく、何故そのテクニックが生まれたのか、その背景にある「音で人を思いやる気持ち」をこそ伝承しなければならない。それさえあれば、いつでも、誰でも、その時その場限りの、正しいテクニックが手に入る。

この気持ちなくして伝えられるものは、最早テクニックではなく「観念」である。

現場での固定観念は、百害あって一利なしである。」

ということです。

私は、サウンドブックや、セミナーで私が話したり、やってみせたりしたことなど、ぜーんぶ忘れてもらっても、一向に構わないと思っています。その中で、皆さんの中に、

「音響っていうのは、演出なんだ。演出っていうのは、思いやることなんだ。つまり音響っていうのは、音で人を思いやることなんだ。」

ということさえ、残ってくれればそれでいいと思っています。
それさえも忘れてしまっても、
「音って、面白いな。音に、これだけ一生懸命な人がいるんだな。そんな(音)って、何だろう」
と、音を意識して生活をしてくれるようになれば、私はもうなんにも申し上げることはございません。本望でございます。

音話屋ダイアリーでも度々書いていますが、現代は、「耳をそばだてる」ことが殆どなくなってしまった世の中になってしまいました。今の世の中の、音環境の崩壊は、目を覆わんばかりです。

それを少しでも良くなって貰いたいと、いろいろな活動を通して、皆さまにメッセージを送り続けていますが、今回のセミナーやハンドブックでも、それが、皆さまに届けば、私は本望であります。

福岡でのセミナーの時、こんなことがありました。
セミナー終了後、客席にいらっしゃった御年配の方が、私のところにいらっしゃいました。

「石丸さん。あんた若いが、そうとう今まで苦労してきたんじゃな。苦労してこなけりゃ、ああいう話はできん。あんたの話は哲学じゃな。

わしは養老院で院内の備品の管理と操作をしとる。慰問の公演や、院内のカラオケ合戦などで、音をだしたりするのに、いつも苦労をするから、なんぞテクニックでも教えてもらおと思って、今日のセミナーを申し込んだんじゃが、ハハハ、あんたは2時間かけてテクニックを伝授するのを否定してみせた。実に痛快だった。

結局私が欲していたものは何も手に入らなかったが、わしは却って、これで良かったんだと思っとる。それ以上に、あんたに会えて、あんたの話が聴けて、本当に良かったと思っとる。
わしも今日から、鳥やら虫やら、聞こえてくる音に、耳をそばだててみようと思うよ。
わしは福岡の山奥に住んでいるし、それにこんな歳だ。あんたとは二度と会うことはあるまいが、出来たら、この年寄りと、握手してくれんかの。」
私は思わず、両手でこの人の手を握っていました。温かい手でした。
ニッコリ笑って「いやぁ、有り難う、有り難う」とおっしゃいました。
あの笑顔を忘れません。
その後、トイレに駆け込みました。何故だか涙が止まりませんでした。
どうか、いつまでもお元気で。もしパソコン通信始めたら、メール下さい。

また、ローランドさんが、セミナーの第2弾をやる、ということになりましたら、是非またおいで下さい。

有り難うございました。

ローランドPAクリニック講義内容

 

[Home][Lunadfuego Products][Kouichi Ishimaru][La Dolce Vita][La vie en Rose]
[Link Link Link][TOY TOY BOX]

Copyright Lunadfuego. All right reserved. E-mail : info@lunadfuego.com