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 ネットワーク伝送のお話、前回の続きです。

 映像も音声も制御信号もテキストも、すべてがデータ化されることによってすべては平等、これがネットワーク伝送のコアになるものであり、現在も色々なところで実験とプレゼンテーションが繰り返されています。

 ギガベースの転送レートの信号線を8本引いて、上り4ギガ下り4ギガで、コンサートの様子と音を、リアルタイムノンリニアで別の会場に送り、複数の会場で同時にコンサートを楽しむというようなことは、既に実働の段階であり、この本の読者諸兄には珍しい話でもなんでもないでしょう。

 今後は、これがどれだけ安価に行えるかという努力にシフトしていき、これは技術というよりもインフラの問題であります。

 私の友人たちはこの状況を以て「もう出来ないことなんてないよ」と言ったりします。

 その度、私は思ってしまうのです。

 とんでもない。まだまだ全然。私が想う時代には到底なっていないんだ、と。

 いつになったら、物が送れるようになるんだろう、と。

 例えばここに、カニがあったとします。

 東京と北海道で、2カ所で鍋をやって宴会を開いている訳です。2カ所の宴会場の間は、音声も映像も制御信号も全てがデータ化されてリアルタイムノンリニアでやりとりできます。

 ではカニはどうやって送ったらいいのでしょう。カニもデータ化すれば送れる訳です。

 そのためには送る側にカニをデータ化する機械が、受け取る側にデータ化しているカニを物質化して戻す機械が必要です。いわゆるコーデックとデコーダーですね。

 そうすると、です。

 送る側でカニという物質を無理矢理転送しようとする必要はないということになります。

 読み取り機、スキャナーがあれば、それでカニをデータ化すればいいわけです。カニの外側から内部を非破壊スキャンする必要がありますが。遺伝子レベルまでスキャンしてデータ化し、そのデータを送りさえすれば、手元のカニはそのまま残ります。

 受け取る側は、今度はデコーダーでデータを物質化します。そうすると、送り手と受け取り手の両方に、まったく同じカニが二つ出来ることになります。

 医学の世界とは全く違うクローンの出来上がりになってしまうのですが、これで、東京と北海道で、1ぱいのカニで2カ所の宴会場がカニを美味しく味わえるということになるのです。

 これが次のデータ伝送でしょう。

 こちらにある物質を、むりやり向こうに転送しようとすると大変なことになります。スタートレックの世界はスゴいんだなーと思います。

 ですが、こちらの物質をスキャンしデータ化して向こうに送ると考えると、そう遠くない未来に、出来るようになりそうな気がしてきませんか。

 それでもまだ、問題はあります。

 カニや霜降り牛肉などを送り合って喜んでいるうちはいいのですが、生きている人間を送るとなると、魂はどうやってデータ化されるのか、という話になってきます。 

 ただの物体を送るぶんには問題なくても、生きているものを送るのは、多くのハードルがありそうです。

 そしてそれが可能になったとして、先にも言いましたように、東京と北海道の二カ所に、同じ人間が二人出来てしまうのです。

 この問題をどうするかは、技術の問題ではなく倫理と政治の問題になってくるのでしょう。

 でも早く、二カ所の宴会場で双方の御馳走を送り合って楽しむ、そんな時代になってほしいですし、それが私が想う世界であります。

 食料問題も解決できますし。


(石丸耕一 音響演出家 www.lunadfuego.com)


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