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 街中で買い物などしていて、テレビのロケに出くわすことがよくあります。今回は、ロケのお話。

 私が勤めている劇場でも、劇場の周辺でも、頻繁にドラマや映画、コマーシャルのロケが行われています。

 劇場自体がユニークな形をしていてなかなかフォトジェニックな劇場だということと、劇場の目の前の公園が何だか若者の集まる有名なスポットになってしまって、その公園の名前を付けたドラマが人気になったりしてしまっています。テレビや映画だけでなく、雑誌のグラビア撮影も頻繁に行われています。

 ある日、昼食に出かけようと劇場を出ましたら、劇場の正面に100人近い機動隊員が終結しているのです。

 最近テロ対策などで騒がしい御時世、劇場内部でも注意が呼びかけられていたところだったので、すわ、何ぞ事件か?とビックリして身構えましたが、よくよく見ると、機動隊員の皆さんの中にちらほら、茶髪のお兄さんだったり、ピアスしてる隊員さんだったり、制服の前をはだけてレニクラのTシャツ着ているお兄ちゃんがいたり、どうも雰囲気がカジュアルです。

 まわりを見ると機動隊の車は無いし、隊員さん達は観光バスの中でお弁当を食べています。

 皆さん、仕出しのエキストラさんだったんですね。

 いやぁ、面白いもん見させて頂きました。異様な光景でした。ロケそのものは日常茶飯時で見慣れてはいても、こういうのは珍しい。うん。

 出演者の中に人気タレントなんかがいると群衆は大騒ぎです。今は東京のどこででもロケが行われていますから、今更テレビだテレビだと騒ぐ人もいなくなって、ちっとやそっとの有名タレントがレポート番組やバラエティ番組なんかを収録していても「ふーん」てなもんで素通りですが、劇場も閉館した午後11時、劇場前の公園でTOKIOの長瀬君主演のドラマのロケをやっていた時は大変でした。

 群衆がキャーキャー黄色い歓声で大騒ぎと思いきや、全員無言で必死になって携帯開いて写真やムービー撮りまくり。これはこれでまた物凄く異様な光景でした。

 深夜の公園が携帯のディスプレイでボワーッと明るく浮かび上がっていました。

 私自身も劇場の世界に来る前は民放ラジオで番組制作に携わっていましたので、ロケにはよく出掛けましたが、このごろの屋外ロケを見ていて、「あれ?」と思うことがあります。

 ロケを行う場所での一般の方々の捌きや車両の交通整理を行うのは今も昔もADの方々でしょう。私の頃もそうでした。

 その方々が、最近は、自分たちがそこでロケをする権利があると言わんばかりの態度でいることです。

 ロケなんて誰もそこでしてくれなんて頼んでない、だから礼を尽くして挨拶して一般の方々に気を使ってロケを「させていただく」という気持ちを忘れるな、と私の頃は耳にタコができるほど言われ続け、後輩に口が酸っぱくなるほど言い続けていたもんですが。


 「すみませーん、ちょっとストップして下さーい」

 妻と近所の商店街に買い物に行った時のことです。いきなり見ず知らずの若造に怒った顔でそう言われました。見るとテレビドラマのロケをやっています。

 それがロケだということくらい誰だってわかりますが、「すみません、○○テレビと申しますが、只今こちらで番組の収録をさせて頂いております。大変御迷惑をおかけしておりますが、ちょうどこれから本番の収録に差しかかりますので、少々お待ちいただけますでしょうか。大体○分位だと思いますが、もしお急ぎでしたらばあちらに迂回ルートを御用意致しておりますのでそちらからどうぞお巡り下さい」と、このくらいの挨拶は昔は当たり前でした。上記の挨拶は私が教えられた挨拶であり、昔、私の実家のそばで石原プロモーションさんがロケをしていた時にスタッフの方がなさっていた挨拶です。これだけきちんとされれば誰だって気持ちがいいものです。

 それが何の挨拶もありません。私達が憮然として立ち止まると、その若者はトランシーバーに向かって「えー、こちらストップしました。」

 おい!羊飼いが羊の群れ止めてんじゃないんだぞ。

 テレビなんだから、ロケやってるんだから一般の方を遮断して当たり前、ではありません。ロケはそんなにエライものじゃありません。上の人に言われたからやってる、バイトだから別に関係ない、では済みません。言われた側はその個人ではなく放送局の名前に対して悪印象を持ちます。指示する側も、若手のやったことだからでは済まされないことをもう一度再認識して欲しいものです。

 それがひいては、テレビメディア全体に対する不信感、侮蔑、につながってしまいます。

 その現場はケーブルの引き回しも非常に汚く見苦しく、お年寄りが足を取られて転びそうなくらいで、一緒に買い物に着ていた妻が言いました。
「照明のキャプタイヤの引き回しがなってない!」
 …一般人の言う台詞じゃねぇなこりゃ。

 すみません、妻も業界の人間だもんで。
 どこで誰が見ているか分かりませんよ。


(石丸耕一 音響演出家 www.lunadfuego.com)

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