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 年末の第9第9第9,そしてニューイヤーコンサートのラッシュで、どこの劇場もコンサートホールも目の回るような忙しさだったのが、ここへきてようやく人心地つける頃でしょう。

 最近はテレビのチャンネルが増え、コンテンツ不足の様で、劇場中継の本数が以前に比べて飛躍的に増えました。確かにドラマやバラエティを制作するのに比べれば、中継収録は安く済ませられるからでしょう。
 おまけに劇場中継は再放送がききます。スポーツ中継だと、いくらなんでも
「えー今夜は、大変評判の良かった先週の巨人-阪神戦の再放送をお送りいたします」
てな訳にはいかないでしょう。スポーツ中継はニュース性、ある意味報道である訳で、同じ中継収録でも、劇場中継とスポーツ中継では番組のスタンスが全然違います。

 コンサート終演後、バラシは劇場スタッフとオーケストラのトランポの人達と放送局のスタッフが入り乱れています。いつ来ても手際の良さに感心してしまう放送局、いつも態度が悪かったり手際が悪かったりする放送局、さまざまです。

 オーケストラもさまざまです。第9などで合唱団が入った場合、合唱台が設置されていますが、その足下に、楽譜やハンカチ、飴玉の包み紙が残っている、というのは理解できるのですが、週間マンガ誌が残っていたり、ハンバーガーの包み紙、馬券の切れ端が残っていたりするのですから「なんだぁこりゃぁ」と皆でビックリしてしまいます。これが在京プロオケで有名な楽団なんですから。
 金管楽器には、吹き込んだ唾液が溜るのを外に出すバルブが付いています。そのバルブを開いて唾液を外に抜くわけですが、バルブに自分のハンカチを当ててハンカチに唾液を吸わせて抜き取る楽団は、終演後の床がキレイです。が、バルブから唾液を床にダバダバと垂れ流して捨てる楽団の終演後は、床が汚らしく濡れていて臭く、たまったもんじゃありません。

 国内・海外を問わず、プロ・アマを問わず、ブラスのセクションで床を汚す楽団とそうでない楽団は混在しています。国内のアマオケでも汚さない楽団はありますし、海外の超有名な楽団でも汚す楽団はあります。

 これは、ブラス個々のパートセクションのリーダー(これをインスペクター、或いは略してインペクと呼んだりもしています)の人格に拠るところが大きいのでしょう。
 チェロは先端の尖った部分を床にザクッと刺して演奏します。おかげで舞台上手側は床が穴だらけです。

 世界中を回っている海外のオケは、旅慣れているのか、チェロ用に分厚いコルクを貼った細長い板を持ち歩いています。椅子の足にその板を固定し、そのコルクにチェロを突き立てて演奏しています。なるほど上手い工夫だなぁ、と感心しました。

 海外の超有名な、名前を聞けば知らぬ者のないオーケストラは、海外演奏旅行用のバイオリンセットを持ってきます。バイオリン奏者は自前の楽器を母国に残し、手ぶらで来日します。まるでビールケースのように十数本のバイオリンがザクザクとささっているバイオリンケースから、無造作に楽器を抜き取っては舞台に出ていきます。海外巡業では何が起きるか分からないから、大事な楽器は持ってこれないという理由と、特にアジア方面はヨーロッパに比べて高温多湿の為、楽器のコンディションが狂ってしまうからという理由の二つから、海外には「惜しくないバイオリン」を持ってくるという訳です。

 当然ながらそれで演奏される音楽は「本国での演奏とは全然違う」と言い切り、「本物を聞きたかったら本国に来て聞いてもらわないとね」と笑います。

 別にそれはこちらを軽視している訳ではなく、本来芸術というものはそういうものなのでしょう。芸術は優れた芸術家が生み出すものではなく、その地の風土、自然、気候が、芸術家というフィルターを通してもたらされるものですから、それが生まれた場所へ赴いてその地の風土、自然、気候の中でその芸術を味わわなければ本物は分からないものです。

 歌舞伎のヨーロッパ公演を終えて帰ってきた長唄の人が、「いやぁ、参ったよ。向こうはエライこと乾燥していてさ、三味線がキンカラキンカラしちゃって。三味が泣かねぇんだよ。」と言いましたが、これも同じことなのでしょう。

 ともあれ、怒涛の年末年始のコンサートラッシュが人心地つきました。第9は今や聞きに行くものではなく自分で参加して歌うものになり、コンサートホールは言ってみればカラオケボックスです。プロオケもそれが大事な収入源となり、これからまた一年、合唱団は練習に励みながら年末にオケを雇うお金をみんなでセッセと積み立てる日々が続くわけです。
 ある意味、クラシックがもっとも日常的に浸透しているのは日本ではないでしょうか。

 ヨーロッパでは、「クラシックを聴きに行くのは年寄りと日本人とアメリカ人だけ。普通のヨーロッパ人は目もくれない」と言っていますから。

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