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 先日、ラジオのCMに出演しました。

 J-WAVEで流れるマクドナルドのCMです。
 今まで、NHKのニュースの特集コーナーに出演したり、FM東京の番組に出演したり、雑誌にエッセイの執筆をしたりしてきましたが、コマーシャルに、それも制作するのではなく出演するというのは初めての体験です。それだけに、久しぶりに、柄にもなくドキドキしたりワクワクしたり、楽しい体験をさせていただきました。

 まして、音響の仕事に従事する人間が、プロ機器やオーディオ機器のCMに出演することは度々あっても、ハンバーガーのコマーシャルに出演し、 CMの中で、
「音響家です」と名乗るのは、とっても珍しいことでしょう。
 が、スタジオの中にはレコーディングエンジニアの方や、マニピュレータやスタジオアシスタントの方々が沢山いらっしゃいます。その方々は言わば、御同業の方々です。向こうもこちらも、互いの言っていることやっていることを、見て聴いて瞬時にそのバックボーンまで把握できてしまう状態です。

 互いに一切誤魔化しや口先やエエカッコシイが効かないオープンカード状態。この状態は大変に緊張しますが、その分、いい汗かいたと申しますか、楽しい現場になりました。

 今回のような、放送や録音の世界の方々と現場を御一緒すると、自分より若い人達が増えたなぁと感じます。同じ音響でも、ジャンルが違うと大分違いますね。舞台・劇場の世界では年配の先達が沢山いらっしゃって、私なんかいつまでたっても若輩者です。
 話がそれてしまいました。そうやって、一般社会に対して、音響という言葉、音響家という人間の存在をアピールすることはとても大切で、しかも積極的に行わなければならない現状があると思います。

 2003年7月に新宿文化センターにて開催された、日本音響家協会の技術セミナー、「立体音響・人の心をふるわせる」という催し物がありましたが、これも、立体音響の本質が技術ではなく演出であるということ、特に舞台音響に関しては、舞台音響に立体音響技術を取り入れるのではなく、舞台音響の本質そのものが、そもそも電気の無い江戸時代から立体音響であったということ、そして何よりの眼目は、業界の人間だけを対象にするのではなく、広く一般にも告知し、日頃は音に殆ど興味もなく気にも留めないという一般の方々にもおいで頂いて開催されたということです。
 自分たちは空間に生きて空間の音を聞いているということ、世の中には音響家という人間達がいて音を通じて人々が少しでも幸せになって欲しいと日々頑張っているということ、日本人が忘れかけている「耳をそばだてる」という行為をもう一度思い出してみようということ、こういったことをテーマに、1つの専門ジャンルのアソシエーションが、広く一般にベクトルを向けてアピールをするということは、今だからこそ、とても大切でとても求められている事だと思うのです。

 また過日、とある自治体に頼まれまして、市民の手作りのミュージカル公演の為の裏方訓練指導に行ってきました。作家・演出家・出演者・演奏者・舞台・照明・音響すべてが市民、しかも素人さんという、熱意溢るる、しかし前途は厳しい企画です。これは2004年3月まで続くのですが、普段ラジカセしか触ったことのない人々に、舞台音響のテニオハからお話するのはとても大変です。

 この企画に参加されている市民の皆さんの三分の一くらいが、私より年上の方々です。中には私の親より年上の方もいらっしゃって、そういう方々に先生と呼ばれ、敬語で丁寧にされるのはどうにも慣れず居心地の良くないものです。何だか自分の親をないがしろにしているような気がして、後ろめたい気持ちにさえなります。

 こちらも丁寧にするとあちらは負けじとばかり更に丁寧に腰が低くなっていきます。何だか低い腰合戦みたいで次第に笑えてしまいます。
 そういう方々に対し、プロが、プロでございと偉そうにしてプロの技を御披露して驚嘆して貰って悦に入るというのはジャンルを問わずよく見かけますが大嫌いです。皆さんプロになりたくて来てる訳じゃないんですから。プロの厨房器具と電子レンジの関係のように、プロに近いようなことを、簡単に出来て、それで日々の暮らしが少し楽しくなったり、今まで気に留めなかった音に耳をかたむけて、それで自分が少し豊かになったり、こういう仕事をしている音響家と名乗る人達がこの世には、この国にはいるんだなということを実感して貰えれば、もうそれで十分だ、それが一番何よりだと思うのです。

 そのためには、何より自分自身が、日頃のルーティンワークに流されず、モチベーションを保って、向かう先を見誤らない様にすることが大事です。

 でも、それが一番難しく、そうし難い時代なんだよなぁ、今というこの時代は。

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