otowa.gif

 このエッセイに度々登場する私の義弟のフランス人に、今月も登場していただきましょう。

「欧米人が日本女性にコロッといく理由の1つにさ、日本語、というのがあるよね。」
 それ、どういう意味?
「ネイティヴジャパニーズってさ、欧米人がどんなに日本語が流暢に話せてもかなわない、なんだか日本語を歌うように話すんだよね。特に日本女性が日本語をキレイに話していると、それだけでウットリするね。」

 まさかそれが理由でこいつが私の妹と結婚したとは思いませんが、オペラのベルカント唱法が言葉の母音成分を美しく響かせる唱法であると言われていますから、子音と母音がきちんと結実しないと言語として成立しない日本語が、しかも他の言語にない独特のイントネーションで語られると、そのイントネーションがメロディーのように聞こえて、歌のように感じられるのかもしれません。まして欧米人は日本人と違って子音を左脳つまり言語脳、母音を右脳つまり音楽脳で受け止めます。ゆえにベルカント唱法が音楽として成立する訳ですが、日本語もまた母音なしに成立しない言語ですから、欧米人は日本語を言語脳ではなく音楽脳で受け止めているのかもしれません。

 この話1つ取ってみても、言語は道具でも記号でもなく文化なのだということが分かります。一時期、グローバルスタンダードがどうしたとかで、日本も英語を公用語にしようとヌカした大馬鹿モンの政治家がいて、多くの方が怒りと反対を表明されました。私も2000年3月号で早速反対いたしましたが、そんな話もいつしか霧のように消えていきました。あったり前です。寝言は寝て言え、ってんです。

 さて。義弟にそのように母国語を褒められて、謙遜と照れ隠しを兼ねて、私も次のように返しました。
「でもさ。この頃、日本語をキチンと話す若い人が少なくなったんだよね。日本語にだってスラングはあるんだよ。知ってた?」
「うん。それは聞いてて分かる。日本語がキレイに話せないのにさ、みんな一生懸命英会話スクールに行くでしょ。あれって僕らから見たらすっごくストレンジでファニー。英語がペラペラ話せたって僕ら誰も尊敬しないよ。だって僕らの真似じゃん。日本語がキチンと話せて日本語のバックボーンを僕らにきちんとレクチャーできるインテリジェンスのある人こそリスぺクトするね。」
 だんだん彼の話のピッチが上がってきました。もう少し義弟の話を聞いてやって下さい。

「もう一つ僕らにとって驚きなのは、日本人は小学校の子供でも魚を食べてそれがサンマだとかマグロだとかヒラメだとかアジだとかタイだとか分かるっていうこと。あれはスゴイよ。僕らなんか身が赤いか白いかくらいしか分からないよ。それで家では普通のハウスワイフがレストランのシェフ顔負けに魚を捌いてみせる。こんなファンタスティックでブラボーなことは世界中何処を探したってないよ。これこそ日本が世界に誇るトラディショナル・カルチャーだと思うな。それをヤングジャパニーズレディは、魚も捌けないのに、ワインを競って飲んでこれがボルドーだとかブルゴーニュだとか言い当てっこしてる。馬鹿みたいだよ。
そんなの僕らは5歳の頃から飲んでるんだから、12〜13歳くらいになったら、大体みんな言い当てられる。日本人の子供が魚を言い当てられるのと同じさ。ちっとも偉くもなんともない。もっとトラディショナル・カルチャーを大事にした方がいいと思うけど。他の国はみんなそれをしているよ。してないのはそもそもトラディショナル・カルチャーを持ってないアメリカだけさ。」

 流石フランス人は辛辣です。ここでもう一人、皆さんに御紹介したい方がいらっしゃいます。
 志麻かのこさん。志麻にほんごあかでみぃという勉強会を主宰していらっしゃいます。元々は超一流の語り/ナレーターでいらした方です。正しく美しい日本語を日本語を教えていらっしゃるだけではなく、歩き方や立ち振る舞い、マナーなども教えていらして、教え子の方々はプロのナレーターやアナウンサーだけではなく、企業の秘書の方、スチュワーデスの教官、大使館の子女にも及びます。

 私も長い間この世界でいろんな方にお会いしましたが、こと語りやナレーション、アナウンスに関して、この方以上の人を知りません。
 上品とかそういう言葉で表現したくない、とても美しい日本語の話し方を教えてくれる方です。
 その志麻さんがこの11月に、日本語を美しく口にする発表会を兼ねたパーティーを開かれます。志麻さんにとっても初めての試みだそうで、私はとても楽しみに、何をおいても駆けつけたいと思っています。

 また11月13日から日本テレビにて2クール、夜12時半から30分間、神田うのさんと一緒に番組を持たれるそうです。どんな番組になるのかまだ伺っていませんが、お時間のある方は一度ご覧になってみて下さい。

 美しい日本語を母国語に持つ喜びを、日本語を美しく口にすることで表現したい。
 言葉は全ての文化の原点です。


OTOWAYA home