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 今回のお話を始める前に、現在の状況を示すカードを、皆様の前のテーブルに並べてみましょう。

・液晶ディスプレイの普及、供給の安定。カーナビにもワイドタイプの液晶が折り畳み収納式で発売されるようになりました。
・光ファイバーによるワイヤリング。数年前までは、プロの現場の人達も「話には聞いているが使ったことはない」という状態でしたが、今では一般の人達でさえ、インターネットのために自宅までファイバーを引きたいと喫茶店で口角泡を飛ばしています。
・劇場・ホールの舞台機構の高度/複雑化。従来では不可能だった舞台装置や舞台演出が可能になる反面、より複雑な操作と安全確認が要求され、大変残念ながら舞台上での死亡事故は根絶されていません。

 上記の3つのカードをご覧いただいたところで、私の手持ちのカードを1枚、オープンに致しましょう。
「インカムが声を伝える道具って誰が決めたの?」
 はい、今回はインカムのお話です。

 元来が商業劇場、それも花道のある劇場で音響を担当していた私にとって、情報を得る手段はインカムによる声の情報と、舞台客席の至る所に設置された監視カメラによる映像の情報でした。客席上手側から花道を映すカメラ、下手舞台側から揚げ幕を映すカメラ、上手袖から下手を映すもの、下手袖から上手を映すもの、奈落の迫り乗り込み口を映すもの、花道下のスッポンの乗り込み口を映すもの。それらをいろいろ切り替えては、自分のキッカケとしていました。また、ミキサー室にいる身でいながら、劇場の人間の一人として、トラブル無く進行しているか、安全確認という気持ちを忘れずに映像を見ていました。

 そのころから、監視カメラの映像と声のインカムが全く別の管轄、別のワイヤリングであることに違和感と不便を感じていました。
 一緒のワイヤリングにして、映像と音声の連絡通信回線を、リンクしたり別個に選択したり、自由にチョイス出来たらいいのに。そしてそれを一括して、劇場の音響担当者の管轄になればいいのに。
 それはやがて、自治体の公共ホールに職場が移ってから、より強い思いに変わっていきます。

 多くの公共ホールに見られる仮設のオーケストラピット。そこには音響施工会社がマイク回線、スピーカ回線を数多く設置してくれるようになりました。しかし、常設のモニターカメラ用回線がある劇場はまだまだ少なく、あったとしてもそれはITVと呼ばれる館内監視モニター回線の一部になっています。とても、舞台進行や、舞台技術員による安全確認という見地から「かゆいところに手が届く」ワイヤリングにはなっていません。音響施工会社の管轄外だからです。音響の管轄であったならばこんなことはあり得ないでしょう。

 この問題は意外なところにも顔を出してきます。

 私が良く知るホールの事です。舞台袖の操作盤に、マイクのマルチ回線が設置されています。その操作盤には、照明のリモートや舞台操作機構の他に、監視カメラのコントロール部も収められていました。
その操作盤に設置されたマイク回線にノイズが乗るようになり、原因を調査することになったそうです。
すると、操作盤の内部で、監視カメラのコントロール機器群から数多くケーブルがだらしなく垂れ下がり、それが操作盤下部のマルチ回線に、ある一定以上の距離まで近づくと、ノイズが乗り始めるということが判明したそうです。

 素人考えでさえ、監視カメララック周辺は電磁波のカタマリであろうことは容易に想像がつきます。これが音響施工会社の管轄になっていたら、こんなずさんな工事にはなっていなかったでしょう。いかにも、言われたものを言われた通り付ければいい、舞台技術の事なんて関係ないしそんなこと頼まれてもいないし知ったこっちゃない、というのがよく現れています。が、これが原因で公演に支障をきたしたらたまったもんじゃありません。

 何だか面白くない話ばかり並んでしまいました。が、現状の改善だけが理由でインカムをフルデジタルにして映像も共に扱おう、という話であるならば、何もここで皆様にお話しすることはありません。

 もっと夢のある、話していても聞いていてもウキウキしてくるような、そんな話でなければ進歩の意味はないし、技術の進歩によって未来が変わるというのはそういうことであろうと思うのです。最近、技術が進歩してもそれによってウキウキするような、未来に夢を持てるような技術の進歩が提示されないから、みんな進歩した技術に飛び付かないんです。

 単にインカムがデジタルになる、インカムと映像を一緒に扱うというだけではなく、そうなることによって見えてくる、「インカムのその先にあるもの」
 それをみんなで一緒に夢見ましょう。
 それは最早インカムという言葉では括りきれない、全く新しい通信回線。

 次回、この続きをお話しします。
 一緒にインカムの次のシステムの名前を考えませんか。

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