otowa.gif

 唐突ですが。貴方は最近、ゲームセンターに行かれましたか?レコード屋さんには行かれるでしょう?
 そこでお気づきになってるでしょう?
「このごろ音が大きく感じるなぁ。自分の気のせいかなぁ。」

音のプロでもない普通の主婦ですら「このごろ何でこんなにうるさいのかしら」と思いながらレコード屋さんから帰ってきたと言っています。
 私は時々ゲームセンターに行くことがあります。そこでの女子高生の会話。
「ねぇ、ゴメン、ちょっと外に出てくるね」「どうしたの?」「わかんない。頭痛くてさぁ、気持ち悪くなってきた。お腹も変な感じ」「なぁに、風邪?」
「ううん、ここに来てから。ねぇ、なんかこの店、うるさくない?」

 騒音問題の槍玉に挙げられるパチンコ屋さんですら、友人のパチンコ好きが、
「馴染みの店が新装開店なんで行って来たんだけど、なんだか頭が痛くなるくらいうるさくてさ。早々に切り上げて来ちゃったよ。気のせいかなぁ。前からあんなにうるさかったかなぁ?」

 さぁ、みんなで手を挙げましょう。「自分の気のせいかなと思ってた」と。

 そうなんです。私の回りで、音の仕事に就いている、いないに関わらず、その場に10人居合わせたら10人共そう思っていました。
 みんなで同じ思いをしながら、みんなで「自分の気のせいなのかなぁ。こう思ってるのは自分だけなのかなぁ?」と思ってたんです。今まで。

 そろそろハッキリさせませんか?
 具体的にどのくらいうるさくなっているかという話は他へお任せするとして、私は、以前このエッセイでシリーズを組んで書かせて頂いた「子供の音環境を考える」、その中で指摘したこの国の音環境の崩壊が、いよいよ具体的に表面化してきたのだと感じています。今までは、ちょうどコンクリートの内部の、目に付かないところが崩れていたのが、いよいよ表面にヒビが入り始めた、そんな印象を受けます。

 音環境シリーズを掲載していた時には、いろんなジャンルの方々からメールを頂戴しましたが、音の専門の方、音を職業としていらっしゃる方からの御意見には、「この国がうるさくなったのは、暗騒音のレベルが上がったからだ」というのが多く、その理由として、エアコンや換気扇が当たり前のように稼働し続けていることを指摘なさっていました。

 つまり、街全体で空調がついている、その室外機の音が蔓延している状態をゼロとして音の物差しが出来てしまっているとおっしゃり、これによって私が書いた「子供たちが森へ行くと、森の静けさが恐いと言ってウォーキングステレオをかぶっている。森の中にイヤホンから漏れたシャカシャカという音が響き渡る」エピソードの裏付けとされていました。

 また別の方は「石丸さんは御存知でしょうが」とおっしゃりながら、地下構内や店舗内での騒音除去装置、皆さんも御存知の、その場の音を集音して逆相の音を発生させることで騒音を打ち消す装置を普及させるべき、とおっしゃっていました。

 私が、皆様と同じく音の世界の人間として申し上げられる、この問題を解決する方法は、「この国に道徳を取り戻す」ことです。
 音の世界の人間達が声を揃えて「道徳を失うと音環境は崩壊しますよ、そうすると人間の肉体や精神に、これこれこういう症状が出てしまいますよ」と、お医者さん達のお力も借りて、アピールすることです。

 ヨーロッパの駅が日本よりも静かなのは、アナウンスの必要がないからです。アナウンスしなくても電車が来れば後ろに下がるし、席は譲るし、駆け込み乗車をしないから、アナウンスの必要がなく、駅が静かです。逆にパリの地下鉄は、かつてジプシーと呼ばれたロマ民族の子供たちが徒党を組んで公然とスリ、引ったくりをするので、子供に気をつけろと日本よりやかましくアナウンスしています。
 道徳のない所はうるさい。道徳が浸透している所は静か。

 音とは話がずれますが、ヨーロッパはバリアフリーのハードウェアがあまり普及していません。必要ないからだ、と言われました。車椅子が駅や階段や交差点に来たら、みんな当たり前のように手を出してサポートするからだそうです。アメリカは、善意で手を出しても、泥棒だと思われてズドンとやられてしまうからエスカレータやスロープなど、バリアフリーのハードウェアを徹底的に普及させるのだそうです。

日本にはどっちもありません。
 音も同じだと思います。
 音と関係が無いような事柄でも、道徳を取り戻す作業を直ちにしないと、もう本当にどうしようもないところまで来ているんじゃないでしょうか。
 でも、どこから始めたらいいのやら途方に暮れますねぇ。

 取りあえず今思いつくのは、電車内で化粧を直したり飲み食いをする時は、親の顔が見たいから胸に親の写真を貼っとけ、ってとこですかねぇ。

backback
OTOWAYA home