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 オペラ、というと、豪華で大掛かりで華やかな、そして「チケットのたかぁ〜い」、自分にはあまり縁のないもの、と思っている人が多いようです。特に、この不景気では、S席の値段を聞いて「まぁ、我が家の夕食の何回分かしら」と感想を漏らすのは、家政を預かる主婦として、しごくノーマルで真っ当な事でしょう。

 そういったオペラは、グランドオペラであって、オペラ全てがグランドオペラではありません。
 グランドオペラの対極には、室内オペラ、チャンバーオペラという、小さい空間で、小編成で上演されるものがあります。当然チケットも安価です。
 別にジャンルとして完全にセパレートしている訳ではなく、単に公演形態の違いだけなのですが、グランドオペラはグランドオペラなりに、室内オペラは室内オペラなりに、それぞれ相手にはない良さと味わいがあります。

 例えば「アイーダ」や「トゥーランドット」「オルレアンの少女」はグランドオペラならではのもので、室内オペラには向きません。
 逆に「劇場支配人」や「賭博師」などは、グランドでは空間が大きすぎて散漫になってしまいます。これらは明らかに室内オペラ向きです。
 あるいは、「コシ・ファン・トゥッテ」や「フィガロの結婚」などは、グランドでも室内でも上演されますが、室内オペラの方が、意表をついた演出を施されることが多く、室内オペラの場合には、オペラそのものを楽しむ、という姿勢が見られます。

 それに対し、グランドオペラで「コシ・ファン・トゥッテ」や「フィガロの結婚」などを上演する際には、歌を聴かせる、という、オペラ本来のスタンスで上演されます。
 どちらがいいとか正しいとかという話ではありません。よくオペラと歌舞伎は一緒に語られますが、例えば「勧進帳」でも、歌舞伎座で上演される勧進帳と、金毘羅歌舞伎で上演される勧進帳とでは、見方も楽しみ方も演じ方も変わってくる、それと同じです。

 では何故今回、室内オペラのお話をさせていただくかというと、室内オペラには、もうひとつの可能性が内包されているからです。
 ものすごく乱暴な言い方をいたしますが、演劇(ストレート・プレイ)にせよ合唱にせよ、ミュージカルにせよピアノにせよ、プロの公演だけでなく一般の方々が自分たちで集まってやるようになって、ようやく根付いたと世間から呼ばれるようになるようです。

 ストレートプレイや合唱は戦前からアマチュア活動が盛んでした。
 ピアノは戦後の高度成長期から一般家庭に広く普及するようになりました。ここまでは、一人で出来るものだったり、自分たちで公演を開催するのに大きな手間がかからなかったり、さほど特殊な技能が必要ではなかったり、さほど沢山のお金がかからなかいものです。

 ミュージカルは、出演者にストレートプレイ以上の技能を要求します。演技だけでなく歌とダンスが必要になるからです。またスタッフにも人数と技能を必要とします。このミュージカルは、80年代以降に、アマチュアの公演が活発になってきました。これは、家庭へのオーディオの普及、キーボードの登場、安価な録音機材(MTRを含む)とミキサーの登場と無縁ではありません。
 さて、オペラです。もともとオペラと言われただけで「高い金払って寝に行くのか」などと揶揄されていた訳ですが、少しずつ、本当に少しずつですが、一般に興味を持たれ始めています。それはCMで歌が使用されたり、それが元で歌手に人気が出たり、発端は大体そんなところなのですがそれでいいと思います。
 爆発的に広く普及するなんて思ってませんし、そうなって欲しいとも思いません。それは無理です。

 日本で「若い人が歌舞伎を見ない」と嘆く節がありますが、ヨーロッパでも同じです。
 イタリアでもフランスでもオーストリアでも、オペラやクラシックコンサートに行くのは「年寄りと日本人とアメリカ人」と言われてます。若い人は目もくれません。日本も外国も、自国の伝統芸術に対する一般の反応は同じです。
 その中でも、オペラが好きになり、自分でも歌えるようになって、(音楽学校の増加も拍車をかけていますが)仲間が集まり、アマチュアでちょっとしたオペラの公演をやってみよう、こういう動きが、やがてはグランドオペラにも客足が向くようになり、オペラ人口の底上げを担うことになります。

 私はここ何年か、アマチュアではありませんが、プロの室内オペラ公演に企画から参加させて頂いています。スーツやGパンで「フィガロの結婚」をやったり、オール電子音楽で「カルメン」をやったり、ピアノ1台の演奏に効果音山盛りで「魔笛」をやったり、結構皆さん意欲的に冒険なさいます。お客様からも「オペラって面白いものだったんだ」「これなら肩も凝らないし眠くならない」「安いのが有り難い」と好評です。
 古来日本人は芸事が好きです。自分でやってみる人が増えると、そのジャンルは盛り上がります。

 オペラも、もう少し面白くなりそうです。

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