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 この号が皆様に届く頃は、2000年を目前にした年の瀬のことでしょう。世の中全体が、猫も杓子もミレニアムで大はしゃぎです。これで来年になったら、手の平を返したように、世紀末、さよなら20世紀、ようこそ21世紀と盛り上がることでしょう。

 誠に結構なことです。中身のない空騒ぎだなんてヒネたことは申しません。いい加減、誰も彼もが、不景気だと肩をすぼめて背中を丸めているのにうんざりして、飽き飽きしているんですから。実際、イベントは目白押しで、日本の主要なドーム・アリーナはスケジュールが沢山入っているそうです。こうしたところからも消費が刺激され、お金の流れが活発になるのは、ステキなことでしょう。

 未来を語るのは楽しいことです。夢を語り合うのはステキなことです。そこに、新世紀やミレニアムといった単語がからんでくると、会話が弾みます。

 貴方は、そんなふうに、夢を語り合う、未来を語り合う仲間をお持ちですか?

 「調整卓いいんかい?」という、「調整卓委員会」と、「調整卓はこれでいいんかい?」を引っ掛けた、何とも真面目な会合にはとてもホノボノとしたネーミングのグループがあります。建築設計の方、メーカーの方、施工の方、そして現場の方が、およそ十数名程、組織の枠を越え、言いたい放題。これが、参加なさっている方々の人柄を反映して、決してケンケンガクガクにならないのです。笑いが絶えず、現状の批判は問題提起の一端だけで、あとは「何が悪いのか」ではなく「どうすればみんながハッピーになれるのか」というスタンスからお話をなさっているので、話の内容はとてもポジティヴで明るく、素敵です。

 調整卓のためのグループとは名ばかりで、音響全般に話題は広がります。皆さん博識でいらっしゃって、話が途切れません。グループに達成目標を持たせない、議論に結論を求めない、というのも、話が弾み尚且つグループが長く続いている一因だと思います。

 私は昔、師匠に「機械や技術に詳しくなるな。無意識のうちに技術の限界が演出のイメージの足枷になるぞ。演出のイメージは無限に広げられるようにしておけ。そしてエンジニアが、それは出来ません、無理です、不可能ですと言ったら、そここそが技術の進歩の必要なところだ。技術の進歩はニーズが先に立つ。その逆はあってはならない。」ということを、いやというほど叩き込まれました。確かに回りを見渡してみると、「調整卓はこういうものだ」「システムはこういうものだ」という固定観念に無意識のうちにがんじがらめになっている同業者は結構います。「当たり前」のことを「なんで?」の一言でブチ破れるということを忘れてしまっています。

「常識」を「なんで?」とひっくり返す「覚悟」と「遊び心の余裕」を持っていなければ、「デジタル」と「通信」と「コンピュータ」の3つの大波を同時に受けている大嵐の音響の海で、針路を定める事はできません。

 現代は十数年前とは比べ物にならないほど技術が進み、機材も中身がブラックボックス化しています。
昔のように、ハンダごてを握って、音響さんが自作したり、機械が作れてついでに操作も出来るのが音響さん、というのでは、到底用が足せない時代になりました。同時にメーカーさんや代理店さんも、製品単体を野菜のように売るのではなく、トータルシステムやコンセプトを販売する時代になりました。

 こういう時代に現場の音響さんが真に求められるのは、演出力です。「こういう音が欲しい」「こういう響きが必要だ」「空間にこういう色の音の絵を描きたい」というイマジネーションです。それに対し、メーカーさんや代理店さんが、「それならこのシステムにこういうチューニングを施すと、要望に応えられるよ」とジョイントしていく関係が現代でしょう。

 では、今申し上げた「音響に真に必要なのは演出力とイマジネーション」、このバックボーンは何になるのでしょう。

 99年9月号でもお話しましたが、「音で人は幸せになれるし、音で人が傷つき、死んでしまうこともある。私達音に関わる人間はすべからく、自らの扱う音の響力の大きさを自覚し、願わくば一人でも幸せになって貰いたい」これが音響のアルファでありオメガであります。これは、つきつめていくと、「人は何のために生きているのか」というところに行き当たります。
 これは、有史以来の、全ての人間の永遠のテーマと言えましょう。これに私が、先に述べた音響のアルファとオメガのスタンスに立つと、迷わずこう答えることが出来ます。

 人は、幸せになるために生きているのです。

ですから私はきっと、どんな困難なシチュエーションになっても、音響という世界に強いモチベーションとプライドを持ち続けることが出来るのだと思います。

2000年の時代にも、誰もが、幸せでありますように。
そのために、音響という立場から、出来る限りのことを、していきたいと思います。

 そして、そういうことを語り合える仲間が入る幸せを、心から感謝致します。


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