2001年 立体音響デモ台本

赤ん坊の泣き声
上手より赤ん坊の泣き声の出ているスピーカを
あやすように抱えて石丸出る

 皆さんこんにちは
 私は今、赤ん坊をあやしています
 お芝居ではよく このように俳優が舞台の上で
 赤ん坊をあやす芝居をする時に
 その舞台の 舞台装置や書割りの後ろで
 私達音響さんが 赤ん坊の声の出ているスピーカを抱えて
 俳優にあわせて あやすように動きます
  
赤ん坊の声 一山おやして
 
 なかなか泣きやみません
 こういうとき 俳優が 赤ん坊をあやして
 下手へ動けば 私達も下手へ
 上手へ動けば 私達も上手へ
 舞台装置や 書割りの後ろで動いています

赤ん坊 また一泣きおやす

 これが 一番原始的で 一番最初の 立体音響
 音像定位であり 音像移動です
 音の出ているスピーカを そのまま動かしてしまう
 これが一番 音の密度の濃い 音像移動になります

石丸 スピーカを後ろへ置きに行く
赤ん坊、泣きやむ

 こうしたことは 電気の無い時代 江戸時代の
 効果音を生の擬音でやっていた頃から
 ずっと行われてきたことです
 虫や鳥の声を 笛で出すときに
 上手で鳴く時は上手で 下手で鳴く時は下手で 吹いていました
 面白いのは 舞台が山の中、という時に
 山の深さを表す効果音、というのがありまして、
 鼓を持った鳴り物さんが二人、
 一人は下手の御簾前に来まして、一人は上手の奥に行きまして、
 下手でポンポン、と打つと、遅れて上手でポンポン、と打って、
 これがこだまを表現したもので、これで山深いところですよ、と
 状況説明をしたわけです
 つまり、舞台音響というのは、電気の無い時代からずっと、
 舞台音響とは立体音響そのものだったんです
 舞台空間は、舞台があって、客席があるのではなく、
 舞台の奥から客席の後ろまでが ひとつの空間なんです
 舞台音響は その空間に 音で 立体のパノラマの 
 絵を描くことなんです
 でも スピーカを持って歩けない所を 音像移動させなきゃいけない時もあります
 例えば こんなふうに

   ウグイスの谷渡り(アナログ移動)

 これはウグイスの谷渡りです
 お芝居でよく使われますね
 今の音の移動は、昔から現在まで普通に行われている、ミキサーの出力フェーダーをクロスさせて移動していく方法です
 出力フェーダーの先の、スピーカからスピーカへ、言わば線で結んで移動していく訳です初めにお聴き頂いた、赤ん坊の泣き声、音の出ているスピーカ一つをそのまま移動させていくのは、音の点の移動、点移動です点移動から線移動へ、電気の技術の発展によって立体音響も進歩して来た訳ですが、それでは今度は、これをお聴き下さい

   ウグイス谷渡り(システム6000)

如何でしょうか さっきとの違い、お分かりになりますでしょうか
もう一度、さっきのウグイスの谷渡りをお聴き下さい

   ウグイス谷渡り(アナログ)

それではもう一つの方をお聴き下さい

   ウグイス谷渡り(システム6000)

如何でしょうか ウグイスが移動しているだけでなく、その空間まで表現されているのがお分かりいただけましたでしょうか
これが次世代の立体音響 従来の技術では不可能だった、音を面で移動させる方法 
音の面移動です
音の点移動から線移動へ そして面移動まで可能になりました
そうすると、こんなことになります
   
グラマン飛来〜機銃掃射〜飛び去る

音が面で移動できると、今のようにスピーカが無い所へも音を移動させることが出来ます 
今までの線移動では、今の飛行機だったら、スピーカの付いているあのあたりでしか
飛ばすことも移動することも出来ませんでした
また、線移動では、どうしてもスピーカの所に音が定位してしまいます
そのため、音に囲まれたり包まれたりする感触は得られても、音のまっただ中にいるような イメージを持たせることは不可能だったのです
この音を聞いてみて下さい

   馬の大群(アナログ)

では、これはどうでしょう

   馬の大群(システム6000)

如何でしょうか 馬が 自分の回りを走っていくのと、自分が馬の大群の真っ只中にいるのとでは、受ける印象が全然違ってきます
音が 客席の中を通りすぎていく こういうことが可能になると、こんな演出が登場します

  のこぎりの音(システム6000)

この音を 今までのアナログでの線移動にすると、

  のこぎりの音(アナログ)

のこぎりの刃が、こーんなに大きくなって、しかも頭の上を通りすぎていってしまいます
もう一度、面移動でののこぎりの音をお聴き下さい

  のこぎりの音(システム6000)

こうした演出は、舞台上の登場人物と同じ出来事を音で体験することで登場人物の感情に観客の感情をシンクロさせる、という意図があります
そういう確固たる演出意図なしにただ闇雲に立体音響をおこなっても、それは遊園地のお化け屋敷のこけおどしにしかなりません
それでは立体音響は認められず根付きません
今まで立体音響と呼ばれていたものが根付いてこなかったのは、立体音響を演出として捉えず技術としてのみ注目されて、その結果演出不在のこけおどしとしか認めてこられなかったからです
演出の必然があってはじめて立体音響は効果を上げるのです

  弓(舞台から客席へ一発)
  弓(客席から舞台へ二発))

如何でしたでしょうか
駆け足で御紹介して参りましたが、
舞台音響はそもそも立体音響だということ
立体音響は点移動から線移動、そして面移動へ進化してきたこと
立体音響は演出であり、演出の必然があってはじめて観客に納得して貰えて根付くことが 出来るということをお話させていただきました
お楽しみいただけましたらば幸いです
長い時間のご静聴有り難うございました


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