デジタル再生機器…こんな話を御存知ですか?

デジタル再生機器。もううんざりするほど聞かされてきた単語だ、ということを、前にアップしたDENONのMDプレーヤ、DN1100Rのレポートにも書かせて頂きました。
にもかかわらず、一部で、こういう話がまかり通っているらしい、ということを、仲間の何人かから伺い、仰天しているところです。

曰く、「エラーの多く報告されているMDに比べ、CD-Rの方がいい。ライトワンスだとは言っても、メディアの単価が大変安いのだから、どんどんプリントすればいいんだ。」
耳を疑いました。ホントにこんなことを信じ込んでいる人達がいるんですか?
とぉ〜んでもない話ですよ!

私の身近な例からお話ししていきましょうか。
ある大きな、有名な公共ホールでは、一昨年の秋以降、個人が作成したCD-Rをホールに持ってきて、ホールのCDプレーヤ及び自分で持ち込んだCDプレーヤで再生しようとして、読み取りエラーを起こすトラブルが続発していました。
調べたところ、音楽CD専門のCD-Rで作成された自家製CDが、一般のCDプレーヤできちんと再生できる確率は約7割。複数の規格のCDが作成できるCD-ROM-Rに至っては、それで作成された自家製CDが、一般のCDプレーヤできちんと再生できる確率は、実に6割5分を割り込む、という統計になったそうです。

これを受けて、その公共ホールでは、利用者に対し、利用契約書を提出してもらう時に、「個人で作成した自家製CDが、ホールの備品のCDプレーヤで再生できない、もしくは再生中にトラブルが発生するなどの理由で事故を起こした場合、当ホールには一切の責任はありません。該当する自家製CDを作成したCD-Rを持ち込んで使用して下さい」という一文を提示し、了承の上、契約しているほどです。

これ、去年の春、早々の話ですよ!
CD-Rの信頼度の心細さはここまで有名だったんです、既に。
それから1年以上も経っているのに、どうなってるんでしょう、全く。

まだあります。
バレエやモダンダンスなど、音楽を本番中流しっぱなしにする公演を主な仕事にしている音響さんにとって、再生機器の信頼性は死活問題です。そういったジャンルの音響さん達の中で、CD-Rは、お話にならないほど信頼性が低い、ということを、御存知ですか?

それは、こういうことです。
MDがエラーを起こす場合、大体、トラックを読み取らない、NO DATAと表示される、等、再生前に再生不能になるケースばかりです。私の回りでは、MDが再生中に急にエラーを起こして音が途中で止まった、というトラブルの事例を聞きません。(どなたか経験がおありだったり、聞いたことがある、という方は、どうぞメールを下さい。お願いします)
CD-Rは、再生中に、急に音飛びのようになった、と思ったら急に止まってしまい、ウンともスンとも言わなくなった、というトラブルが起きるんですよ!
MDなら、再生が始まりさえすれば、少しは安心できますが、CD-Rは再生できても、再生中ずっと生きた心地がしない。
これで、どうしてCD-Rの方がMDより良い、なんて話が出てくるんでしょう!?

今回のレポートの目的は、別にCD-Rをけなそう、という訳ではないので、CD-Rのトラブルの話はそろそろこのへんにしておきましょう。
要するに、MDもCD-Rも信頼性はドッコイドッコイ、トラブルの起き方も違う、それを、現場の細かなリサーチなしに不用意にCD-Rの方がMDより安心などという風評が立つのは危険きわまりない、そういう現場を知らない人間の話に耳を貸すな、ということです。


さて、ここでようやく今回の本題、私がこよなく愛するオタリのDX-5050の登場です。
音話屋ダイアリーの99年4月号にも書いた通り、オペラやミュージカルの公演では、最早、すっかり手放せない相棒となりました。

これについても、使ったことがない人達の、知ったような評論によって、すっかり「可搬型のデジタルMOレコーダ/プレーヤ」という、不名誉極まりないレッテルを貼られてしまったようですので、そろそろここらで、そのレッテルをひっぺがしにかかろうと思うわけです。

まず初めに、これだけは皆さんの誤解を解いておきたいのです。
DX-5050はMOレコーダ/プレーヤなんかじゃありませんよ!
DX-5050には確かに現在
630MBのMOドライブが搭載されています。しかし、1.3GBのMOドライブに換装が可能です。
つまり、利用者の好みで、ZIPだってZAZだって、何だっていいんです。ドライブユニットのネジをはずして、抜いて、差し替えるだけでいいんです。
背面のスカジーIDのディップスイッチを7に設定してやれば、内蔵ドライブは認識されず、スカジーからつながれた外付けハードディスクが認識されます。
つまりDX-5050は、スカジー端末機なのです!
DX-5050の目指している先は、デジタル再生機器なんてものではなく、万能ハードディスクマシンだということです。

そして、DX-5050を含めて、デジタル再生機器という括り方をされている機材の中で、DX-5050だけが、次世代のシステムをにらんだ、次世代への橋懸かりとなる機種なのです。
その訳を、2つの理由を挙げて御説明しましょう。

まず一つ目。
昨年の秋、私は、あるイベントにて、以下のようなシステムでの脚本・演出、音響デザインを行いました。
音素材は全てWAVEファイル。静止画像は全てJPEGファイル。音素材と映像素材が平等にそれぞれ1枚のファイルとしてハードディスク内に存在し、それらを、単一のQシートソフトで呼び出し、再生します。
これがどれだけ意義のあることか、どれだけホール音響・劇場音響にとって画期的なことか、現場に近い方であればあるほど、その意味が良くお分かり頂けるでしょう。
今までは、映像機材と音声機材が別々でした。そりゃそうですね。ビデオデッキでCDは再生できません。
メディアの数だけ再生機器が必要だったのです。

そしてそれらを、同期させ、その同期がちゃんとできるか、急にはずれたりしないか、ひやひやしながらオペをします。勿論、それぞれの再生機器に挿入されるディスクやテープの中の、トラックを指定して呼び出し再生する、それをあらかじめプログラムしておく、なんてことが、映像機器と音声機器でコンモに行える訳がありません。
音声は音声ミキサーに、映像は映像ミキサーに立ち上がり、ミキシング/エフェクトされて出力されていきます。
これが今までのシステムでした。



これが、一つのハードディスクに映像・音声共に保存され、単一のQシートで管理されて、出力端子だけが別、という時代にようやくなりました。そして、そのシステムが実際のイベントで実働したのです。
これが可能になったのは、いち早くデータ保存をWAVEファイルで行うことを決めたDX-5050のおかげです。既に追従する他社製品も出てきましたが、雪崩のようにそうなっていくと思います。
現在、DX-5050と一緒に並べられて「デジタル再生機器」などと呼ばれているものは、いずれ「DX-5050以前」「DX-5050以降」という分類のされ方で呼ばれるようになるでしょう。

音響の業種が、放送、スタジオ、PA、効果と細分化されたと定義されたのが80年代後半から90年代頭だとすれば、90年代半ばから既にほう芽しはじめていた「細分化されたものがコンピュータという統一言語によって再び収斂する」という予言が、成就したということです。
あとはもう放っておいても、普遍していくばかりでしょう。
肝要なのはメディアがどんな形をしているかではなく、記憶形式だということです。

次に、二つ目。
デジタルミキサーについて、「卓がハードディスクを内蔵し、音素材を卓に放り込むことで再生機器レスの環境をつくる」という意見は随分前からありますが、「じゃあどんなハードディスクがいいのか?バックアップはどうするのか?」という疑問への回答が、DX-5050だ、ということです。


「DX-5050を挿入するスロットを卓の下に作っときなさいよ。」これで終わり。これで十分です。
稽古の時にはスロットからDX-5050をズボッと抜き出して手に下げて稽古場へ。必要な音素材は卓につないだ通信ケーブルで電話線を通ってダウンロード。MOもしくは任意のメディアにバックアップ。本番は卓からDX-5050にアクセスしてフェーダーに割り付けてオペレーション。
完璧でしょう。ただでさえ狭いミキサー室が、これで再生機器レス環境になって少しは広く使えます。


ああ嬉しい。ミキサー室が少しでも広くなって欲しいというのは、音響さん全ての願いではないでしょうか?それに再生機器レスとは言っても、必要な時には卓のスロットからDX-5050を抜き出せばいいんですから、厳密には再生機器内蔵型卓、ということになりますか。


このレポートは、DX5050のユーザー/オーナーとしての私の個人的なレポートであり、オタリテック株式会社とは全く関係ありません。
従って、このレポートに関する質問・意見・抗議その他は、全てkohtz@.lunadfuego.comまでどうぞ。
尚、このレポートは99年5月のアップであり、予告なしに不定期に改訂、追加、削除の可能性がありますので、御了承下さいませ。
挿し絵に使用されているDX-5050のイラストは、オタリテック株式会社よりLunadfuegoが、ホームページのレポートについてのみ、マニュアルの本体イラストを複写・加工・転用の許諾を頂いて使用しているものです。
挿し絵に使用されている各機材のイラストは、株式会社アーツテック様より発売されている著作権フリーのイラストより転用・掲載させて頂いております。

7/31追記

1・このレポートを見て下さった、小野寺博さんという方から、メールを頂戴いたしました。
小野寺さんがご存知の、某劇団の公演にて、MDで叩き出しをしていたところ、再生中に音が止まる、というトラブルが起きたことがあったそうです。
いやぁ、MDでも起きているんですねぇ。
この場をお借りいたしまして、小野寺様に、情報をお寄せ下さったことを、心から御礼申し上げます。
どうも有り難うございました。これからも宜しくお願い申し上げます。
皆さまも、現場での再生機器のトラブルの症例を、どうぞ当サイトまでメール下さいませ。

2・DX-5050をSCSIで直接パワーブックとつないで使用する、という件ですが、私のパワーブックG3(250/13)のOSを8.5.1にアップしたところ、(それまでは8.1)直接つないで使用することが出来なくなりました。
これについては、オタリテックさんからも私のところに問い合わせが来まして、現場の症例データを集めているとのことだったので、状態をお話しまして、他はどうなのかお伺いしたところ、他でも、OS8.5にアップしたら出来なくなったとのことです。
Mac OSは8から8.5にアップしたとき、サウンドまわりが随分と変更になったようだ、とのことでした。
現在私は、カメオインタラクティヴさんと松田通商さんが取り扱いをされるVXという、WIN/Mac共用の、PCカードタイプのサウンドカードを入荷待ちです。
これは、アナログIN/OUTにキヤノンが、デジタル(SPDIF)にRCAコネクタが、合計6本のケーブルが出ているカードで、これがあればパワーブックが直接再生機器になってくれますし、デジタル(SPDIF)でDX-5050と接続できます。
しかし、私の今回のレポートのキモは、「アナログとデジタルの話をもうやめて、映像も音声もみんな等しく1枚のデータファイル、というとらえ方をすることで、ファイル同士の交換、転送、コンバート、再生、録音、Qシート管理をしていけば、新しいオペ環境の時代が開ける」ということでしたので、この現状は大変痛いですな。
はやいところMac OS8.5に対応出来るように、そしてWAVEよりも音質のいいAIFFや、今後台頭してくるMP3形式での保存なども検討して欲しいと思います。

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