DENONのMDプレーヤ DN-1100Rによせて

 新年早々、「ふぉるく」という音響会社の、宮沢正光さんという、大変偉い方からお電話を頂き、「インターネットでMDプレーヤについて検索しても、殆どヒットしない。特に現場からの声を上げていくべきだ。」とおっしゃる。至極尤もな御意見なので「そうですね」と返事をすると「君、書きたまえよ」とニコニコしながらおっしゃる。電話なのになんでニコニコしてるって分かるんだというツッコミはしないで頂きたい。声を聞いていても、電話の向こうの表情に確信が持てる、そういう瞬間をどなたも経験したことがおありだろう。

兎に角、「えぇ、私ごときが」と謙遜してみても、先方は今更私の謙遜なんて屁の突っ張りにもならない、お前の心底は先刻承知だ、といったニュアンスで軽くイナされてしまう。こうなるとこちらは唯兜を脱ぎ、手前の底の浅さを恥じるばかりである。

 そういう訳で、この際おだてられた豚になって木に登ってみようと思う。
ちなみにこのテキストは99年1月のアップであり、不定期に加筆や画像の追加などを行う予定である。


 DENONのMDプレーヤ DN-1100Rは、今となっては少々古い型番となったが、後継機種は出ている筈である。当時、MDは幾つかのの問題を抱えていた。

1・エラーが多い
2・芝居やミュージカルに適した再生機能(ポン出しと一般に呼ばれる再生方法)
3・ラフな使用をする現場に耐えられるタフなボディ

 どこの現場も、これに応えてくれる製品を探していたが、みんな高級機種は放送局仕様のものばかりで、舞台の現場で使える物がなかった。仕方なく民生機やMDウォークマンを使用していたのを思い出す。
 MDウォークマンは熱によるエラーが頻繁に起き、皆さん蒲鉾の板などで簀の子を作り、その下にファンを取り付けて、本番オペをしていた。まるでパワーブック2400やパワーブックG3みたいじゃないか!!

 そこに登場したのがDENONのMDプレーヤ DN-1100Rであった。

 私はこれを、同じ業界の大先輩、エスイーシステムという音響会社の山本能久さんから御紹介頂いたが、本来はDJ用に開発されたものだという。だから価格が13万から14万程度で、手頃どころか当時の他社の業務用MDに比べれば「安い!」と感じたものだ。

 ラックマウントタイプであるというのも有り難かったし、本体に10個の白くて大きい、サンプリングパッドが付いている。これが大変便利だ。
 このサンプリングパッドは、前述の通り、DJ用に開発されたものであるので、大きさや色から見ると、リズムマシンについているパッドを彷彿させるが、触れた時の手触り、叩くときのストロークの「遊び」の塩梅やラバーの柔らかさは全く別物で心地よく、オペ中の私個人の生理に程よくフィットしている。リズムマシンのパッドの堅さや叩いた時の不快感、ちゃんとヒットできたのかという不安感とは無縁である。

 LOADボタンを押すと、自動的にディスクに記録されているトラックを番号の若いほうから10個分、パッドに割り振ってしまう。そうすればその音はもう、サンプラーと同じ扱いになる。それが効果音でも、音楽でも。

 もう、効果プランの、従来テープ割りと呼ばれた作業が大幅に変わってしまった。

 今までは、例えば人を斬る音が20個なら20個、テープに録音した訳だ。短い間(ま、と読んで下さい)でバシュッバシュッバシュッと行くなら、同じテープに続けて入れておくと、キッカケに合わせて出せなくなるので、複数のテレコに割り振ったものだ。
 また、暗転音楽も、アナログテープの場合は転換時間を考慮して長めに録音しておくので、必然的にテープが長くなる。次の音へ送るのが一苦労になる。これが全く不要になった。今まで同じ曲を何杯も入れなければならなかった暗転音楽が、一杯で済んでしまうようになったのだ。音楽が終わって、まだ転換に時間がかかっていたら、また同じパッドを叩けばいいのだ。
 これで、従来テープ割りと呼ばれた作業が大幅に変わってしまったと申し上げた理由がお分かり頂けただろうか。はっきり言って、これら2つの理由でテレコからディスクにオペ環境を移行した現場の方も多いだろう。

 そして99年1月現在、購入してから今までに2年半余、30公演以上、ステージ数で言ったら一体どれくらいになるだろうか、ずっと私の公演を支えてくれている。そう、一度のエラーもなしに!
 これは太文字で書いてもいいと思うよwebmasterさん、一度のエラーもなしに!ダ!!
 この実績の前に、他製品、他機種へ浮気をしろと言うほうが無理な話だということは、心情として御理解頂けるだろうか。

 全く、こういう情報を互いに交換しあえる会が開催されないというのは嘆かわしいことであると同時に、それが可能であるのがインターネットであるというところが、現場に忙殺される私がここまでのめりこんで自らホームページを開設する最も大きな理由である。

 さて、リモートである。このホームページに同じくアップしてあるオタリのMOプレーヤ、DX-5050のレポートにも書かせて頂いたが、リモートは、オペレータの指の延長線であり、製品のスタンスもそうあって欲しいと思うし、指の延長線上としてどういうスタイルであるべきか、というのが、同じ音響でも放送やスタジオや劇場・ホールなどによって要求がテンデンバラバラだというところが、作られる方々の最も頭の痛いところだろう。

 DN-1100Rにしても、本来がDJ用として開発されたものなので、舞台公演での使用を想定したリモートが用意されていない。これに関しては、利用者の声をリサーチの上、別途開発する、そしてそのリモートは、1100Rの後継機種にも装着できるようにする、という話を聞いた。大変嬉しく有り難いことである。


 巷で言われているように、MDはそのメディアそのものの信頼性の無さから、次期主力再生用メディアとしての認知を受けられないままでいる。一方、価格の安さ(それはディスクの値段というよりは本体価格の安さが理由)から、プロではない一般の人たちには、馴染みのあるメディアになりつつある。
 しかしそれとて決定打にはならない。今の時代、MDプレーヤを買うお金があったら、パソコンを買ってしまうのだ。

 私がよく使う言い回しだが、「20万円出して、MDはMDにしか使えない。でもパソコンなら、ワープロにもゲーム機にもCDプレーヤにも通信端末にもなる。この2つをお客様の前に並べて、20万円払って好きなほうを持っていって下さい、と言ったら、誰だってパソコンを持っていくだろう」ということである。
 そういう時代なのだ。15年以上前なら、日経新聞に毎年掲載される「高校生の欲しい高額商品」のベストテンにオーディオ製品が幾つもランクインした。今はベスト20にも引っ掛からない。

 だからカセットテープも消滅し切れないでいるし、オープンも消え切れないでいる。決定打の出ない時代なのだ。
 加えて、
 コンピュータの普及、
 通信のインテリジェント化、
 調整卓のフルデジタル化、
 この3つが指し示す未来は何か。「卓が巨大なハードディスクを積み、再生機器レスのオペレート環境を、通信によって支える」ということにほかならない。これを私は94年から言い続けてきた。
 もうこの99年現在の自分の周りの状況を見回せば、後は何も言わなくても、放っといたってそうなる。そのスピードが加速するか、このスピードのままか、その違い位だろう。

 CDの新譜すら、通信によって配信されるようになるのは目前だ。それが技術的に良いか悪いかという議論は当事者達にとって不毛だろう。なんたって、巨額のレコードプレス工場維持費が必要なくなるのだ。求められる枚数分を汗かいてプレスするより、1つだけサーバーを用意して「買いたい人はアクセスしておいで」とやった方が楽で安く付く。利幅が増える。レコード屋さんは端末接続センターになるのだ。
(そこに従来のレコード会社という概念の崩壊があり、メジャーレーベルとインディーズレーベルの壁が崩れ、サーバーを持てば誰でも自宅で新譜の配信が可能になる可能性、あるいは危険性と呼ぶべきかも知れないが、そういう面白いカオスが待ち受けている訳だが、それはまた別の話。

 そうやって新譜がCDで発売されなくなった時、ダウンロードした新曲をどうやって保存するかという点において、MDはもう一度、シェアをドカンと爆発的増大させるチャンスを持っている。もちろん記録フォーマットはコンピュータ寄りになるだろう。

 ここまでの話から、私は個人的に「6mmオープンの次に来るものは何か」なんて話に何の興味も湧かないし、個人的に早いところ「再生機器レスのオペレート環境」と「通信によって距離と時間の壁を越える環境」にならんもんかと思っているし、そうするとあとは、CD(もしくはDVD?)と、ハードディスクのバックアップとしてのポジションのMO、そしてプロでない人たちとのメディア互換としてのポジションのMDを用意する、というスタイルになるのだろうな、と夢想している。
 そうすると、だ。

 MDプレーヤは安ければ安いほどいい!

 ということだ。
 あー、ここまでくるのに長く回り道してしゃべってしまった。長く引いてすみません。
 その意味でも、1100Rの13万円ちょい、というのは魅力な訳ですよ、ハイ。
 なんてったって、CD-ROMライターが7万円ですから。プロはともかく一般は本体価格で判断しますからね。「プロはプロ」と言ったって、パイが小さけりゃ開発も遅れ、価格も下がらず、メディアやパーツも流通しないんだから。現にそれでプロもMDを無視しきれないでいるんだから。



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